ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下のANAウイングス(AKX/EH)が運航してきたボーイング737-700型機が6月27日、岡山発羽田行きNH654便を最後に退役し、2005年の就航から16年で姿を消した。
旅客機は通常20年程度は運航する中、少し早めのリタイアとなった。ANAグループが運航していたジェット機では座席数がもっとも少なく、座席数は2クラス120席(プレミアムクラス8席、普通席112席)だった。
—記事の概要—
・「短い滑走路や悪条件でも運航しやすく安心感ある機体」
・残りはエア・ドゥ運航機
「短い滑走路や悪条件でも運航しやすく安心感ある機体」
737-700は、持株会社化する前の全日本空輸(ANA/NH)が2003年6月に18機発注。2005年11月から受領を開始し、2008年4月に完納となった。初号機(登録記号JA01AN)と2号機は金色塗装の「ゴールドジェット」で、中部空港(セントレア)を拠点とし運航していたことから、名古屋城の「金鯱」にちなんで金色となった。
737-700の国内線初便は、2005年12月23日の福岡発中部行きNH212便。国際線はANAグループのエアーニッポン(当時)が運航する中部-台北線(EL2111/2112便)で、2006年1月10日に就航した。中部-台北線投入は当初2005年12月23日を予定していたが、機材導入の遅れにより延期された。国際線運航時は136席(1列3-3席配列)のうち1列目から9列目までの最大36席を「Premium Economy Asia」と名付け、中央座席をテーブルとして1列2-2席として扱った。一方、国内線は1クラス136席で運航した。
ANAでは737-800(2クラス166席)も運航しているが、737-700の全長は33.6メートルで737-800の39.5メートルよりも5.9メートル短く、胴体中央の非常口が737-800は片側2カ所あるのに対して、737-700は1カ所だった。
全機退役する今年度まで運航を続けたのは3機で、5月18日に2号機(JA02AN)が売却先の米国へ向かい、残り2機となったJA05ANとJA06ANには、機首両サイドには退役記念デカールが貼り付けられた。JA05ANは、6月20日の中部発羽田行きNH86便を最後に退役しており、最後の1機となったJA06ANによる27日のNH654便が、ANAの737-700としてはラストフライトになった。
NH654便は乗客119人(幼児1人含む)を乗せ、岡山を午前9時36分に出発。羽田のA滑走路(RWY34L)へ午前10時52分に着陸し、82番スポットへ午前11時3分に到着して最後の商業運航を終えた。乗客には搭乗証明書やステッカー、クリアファイル、フォトブックがプレゼントされ、羽田に到着時は社員が横断幕を手に出迎えた。
JA06ANは、2006年8月1日の関西-那覇線が最初の投入路線で、総飛行時間は3万3097.20時間、総サイクルは2万2084サイクルだった。
NH654便の機長を務めた大ヶ谷雄一さんは岡山出身で、友人たちも岡山空港へ駆けつけた。737-500で副操縦士になった後、737-700で機長昇格したため、思い出深い機体だったという。「短い滑走路や悪条件でも運航しやすく、非常に安心感のある機体だった」と振り返った。
残りはエア・ドゥ運航機
また、18機のうち2機は航続距離延長型の737-700ERで、世界初導入だった。「ANA BusinessJet(ANAビジネスジェット)」と命名され、座席数は最初に導入したJA10ANが2クラス48席(ビジネス24席、エコノミー24席)、2機目のJA13ANは世界でも珍しい全席ビジネスクラス(38席)で、成田-ムンバイ線などの国際線を飛んでいたが、2016年3月に2機とも退役。2007年3月の就航からわずか9年で退役と、20年は飛ぶ旅客機の中では短命で、就航16年で姿を消す737-700の中でも、10年未満で退役したのはこの2機だけだった。
ANAが運航していた737-700のうち、ANAHDが出資するエア・ドゥ(ADO/HD)へ約半数にあたる8機が現在もリースされており、JA07AN-09AN、11AN-12AN、14AN-16ANが1クラス144席仕様で運航を続けている。同社では当面これらの737-700を運航する見込み。
*写真は21枚。
*写真特集はこちら。
*なぜ16年で退役?。解説はこちら。
なぜ16年で退役?
・ANA 737-700はなぜ16年で退役したのか 45機発注も6割は737-800に(21年6月27日)
写真特集・ANA 737-700退役
・「短い滑走路でも運航しやすかった」(21年6月28日)
2号機離日や5号機ラスト
・ANAの737-700、JA05AN退役 中部発羽田行きで、残り1機に(21年6月20日)
・ANAの737-700、元ゴールドジェット2号機が売却先へ 6月で全機退役(21年5月18日)
デカール貼付
・ANA、退役デカール貼った737-700運航開始 リボンはゴールド(21年5月11日)
・ANA、737-700に退役記念デカール貼付 最後の2機に(21年5月11日)
機材計画
・ANA、737-700退役へ 6月に全3機、中部で記念チャーターも(21年4月26日)
・ANA、機材を8%削減 22年度末は最大280機(21年5月2日)
世界初の737-700ER
・9年で退役、もう一つの“ANAビジネスジェット”737-700ER(21年4月10日)
特集・さよならANAビジネスジェット
前編 40席の贅沢仕様737-700ER(16年3月30日)
後編 窓付きトイレの贅沢仕様737-700ER(16年4月8日)
エア・ドゥ時代のJA01AN
・「すてきなたびを」写真特集・エア・ドゥ新塗装737-700(12年11月3日)
【お知らせ】
4段落目の初便に関する情報を更新しました。(21年6月27日 18:14 JST)