エアバスが大型機A350-900型機をベースとした貨物機の受注を早ければ7月にも開始すると、ブルームバーグが6月9日に報じた。エアバスはコメントを控えた。大型貨物機の新造機は、ボーイング777Fがほぼ独占している状況だ。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大後、航空貨物需要は堅調に伸びており、旅客収入が大きく落ち込んだ航空会社の貴重な収益源になっている。大型貨物機の新造機はボーイングが777-200LRをベースに開発した777Fがほぼ独占。最大貨物搭載量が100トンクラスの機体で、同サイズのマクドネル・ダグラス(現ボーイング)MD-11型機などの経年機を置き換えている。
エアバスには100トンクラス貨物機の新造機は存在せず、中型機A330-200の貨物型A330-200Fのみで、受注は38機にとどまり完納している。報道によると、エアバスはすでにA350の貨物型について、航空貨物大手の首脳に計画を説明しているという。
777Fは5月末時点のキャンセルを含む総受注が277機、納入が205機で、受注残が49機となっており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が感染拡大し、貨物需要が旺盛となった2020年以降はDHLエクスプレスなどから受注を25機積み増している。
これまで大型貨物機はボーイング747-400型機やMD-11、DC-10などを旅客機から転用した機体が多かったが、DHLやフェデックス・エクスプレス(FDX/FX)、ルフトハンザ・カーゴ(GEC/LH)などが新造機の777Fを発注しており、日本では全日本空輸(ANA/NH)が2機導入している。
747-400の後継となる747-8は2022年に生産完了となることから、貨物型の747-8Fもアトラスエアー(GTI/5Y)などを傘下に持つアトラス・エア・ワールドワイド向けの4機が最終生産分となる。
ボーイングが2020年10月に発表した航空機の需要予測によると、航空貨物は年率4%の成長が見込まれ、貨物機の需要は2039年までの20年間にワイドボディーの新造機が930機、旅客機から転用する改修貨物機の需要が1500機発生すると見込んでいる。
エアバスは、過去に総2階建ての超大型機A380の貨物型を計画したが実現していない。A350-900の貨物型を開発した場合、EASA(欧州航空安全庁)やFAA(米国連邦航空局)の型式証明を取得するには数年を要することから、航空貨物を取り巻く環境が一変している可能性もある。ボーイングの独走を許す今、エアバスは難しい判断を迫られそうだ。
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