ボーイングが、航空自衛隊向け空中給油・輸送機KC-46Aの一部スペアパーツについて、日本政府に過大請求していた可能性があると、ブルームバーグや米専門紙Defense News(ディフェンスニュース)が現地時間6月7日(日本時間8日)に報じた。ボーイングは過大請求を否定している。
報道によると、日本政府とボーイングが4月に結んだKC-46Aのスペアパーツ供給契約で、ハネウェル製ナビゲーションライト(航空灯)が米空軍向け価格の約16倍で請求されていたという。ナビゲーションライトは、軍用機と民間機を問わず航空機の進行方向と位置を示す灯火で、主翼の進行方向左翼端が赤色、右が緑色、機体尾部が白色と規定されている。
ボーイングは、Aviation Wireの取材に対し「初期のスペアパーツの請求について、誤って空軍に過小請求していた。その後の契約では正しい金額を請求しているが、結果的に価格が上昇したと認識されてしまった。われわれは自らのミスを認めている」と、過大請求との見方を否定した。
空自向けKC-46Aは、米空軍による同盟国に向けた有償軍事援助(FMS)によるもので、購入費用は日本が支払っているが、契約は空軍が管理している。ボーイングは、空軍にスペアパーツ契約からナビゲーションライトを外し、ハネウェルと直接交渉できるようにすることを提案したが、空軍はボーイング経由で購入する決定を下したという。
Defense Newsによると、契約額8800万ドル(約96億円)のうち、約1000万ドル分が妥当な金額かを空軍が検証できなかったとしている。1000万ドル分についてボーイングは「民間航空市場における未曾有の課題を背景に、航空宇宙用スペアパーツの価格が昨年大きく変動したため」と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による高騰だと説明した。
KC-46Aは、民間旅客機のボーイング767-200ER型機を母機とした空中給油・輸送機。ボーイングは米空軍向けとして179機の製造を計画している。航空自衛隊も導入計画を進めており、今年から引き渡しが始まる見通し。6機を調達する計画で、鳥取県境港市の美保基地へ配備を予定しており、2019年1月に防衛省が公表した単価は1機約249億円となっている。
空自への初号機納入は今年6月を予定していたが、コロナ影響による試験の遅れなどから、年内の引き渡しとなる見込み。防衛省は、地元の境港市に納入遅延の可能性を今年2月に説明している。
ボーイング製自衛隊機では、空自の旧マクドネル・ダグラス(現ボーイング)F-15J戦闘機の近代化改修についても混乱が起きている。、ボーイングなど米側が示した初期費用が高騰したことから、日本側では計画の取り下げの可能性も含めた議論が進められている。
F-15Jの近代化改修では、スタンド・オフ・ミサイルの搭載や搭載弾薬数の増加、電子戦の能力向上、デジタルコックピットへの改修などを計画。ボーイングは日本側のパートナーとして同機をライセンス生産した三菱重工業(7011)と、2020年7月に契約を結んだ。
関連リンク
KC-46A Pegasus(Boeing)
U.S. Air Force
防衛省
航空自衛隊
KC-46ペガサス(ボーイング・ジャパン)
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