日本航空(JAL/JL、9201)は6月1日、羽田空港を出発する国内線の一部で、スポット(駐機場)から航空機を牽引車で押し出す「プッシュバック」の距離を短縮する「ショートプッシュバック」を始めた。CO2(二酸化炭素)排出量削減と航空機の地上走行時間の短縮による定時性向上を図る。羽田空港に就航している航空会社で同方式を採用するのは、JALが初めて。
対象となるスポットは、32番から34番と36番から40番までで、いずれも連絡バスで向かう場所にある。これらのスポットから出発するボーイング737-800型機とエンブラエル170(E170)/190(E190)型機が対象になる。
従来はスポットから90度曲がったところにある「プッシュバックレーン」と呼ばれる場所まで機体を平均2分ほど押し出していたが、ショートプッシュバックでは半分の45度曲がったところまでで済ませて牽引車を外せるようになり、平均30秒程度時間を短縮する。
1日は、羽田を定刻より3分早い午前9時47分に出発した松山行きJL433便(ボーイング737-800型機、登録記号JA347J)の場合、1分30秒ほど押し出したところで牽引車を切り離し、同50分には滑走路へ向けて自走を始めた。
ショートプッシュバックにより、駐機中の航空機に電源を供給するAPU(補助動力装置)の使用時間を短縮することでCO2を年間21.5トン削減し、プッシュバック距離短縮で牽引車からのCO2排出量を年間1トン削減する。JALによると、CO2排出削減量は1トンあたり1リットルのペットボトル50万本の体積と同等だという。
また、地上走行時間を短縮することで、同一時間帯の出発便の中で早めに離陸できるようになり、定時性向上につなげられるという。
JALによると、交通量の多い羽田空港ではこれまでショートプッシュバックの概念自体がなかったことから、従来方式でプッシュバックを行っていたという。JALが国土交通省航空局(JCAB)に提案し、安全性に問題がないことなどが確認できたことから実施に至った。
JALが就航している地方空港では、すでにショートプッシュバックを実施しているところがあり、広島と北九州、仙台で実施している。羽田の他のスポットや機種で実施できるかは、航空機のジェットエンジンから後方へ噴出される高温・高圧の排気「ブラスト」の影響や、地上を走行する車両との間隔を確保できるかなどを検証して検討する。
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日本航空
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