ボーイングが787型機の引き渡しを一時停止したと、ウォール・ストリート・ジャーナルなどが現地時間5月28日に報じた。以前確認された787の品質問題について、FAA(米国連邦航空局)が解決策の詳細な情報を同社に求めたため。ボーイングは、「未納入の787の検証作業に関連する追加情報をFAAに提供するよう努めている。透明性のあるタイムリーな方法で、FAAと緊密に協力していく」との声明を発表した。ボーイングによると、運航中の機体に影響はないという。
787は昨年、胴体接合部の一部で不具合が発生。11月から2月までは引き渡しを一時中断し、3月に再開したばかりだった。各社の報道によると、アメリカン航空(AAL/AA)が週内に受領予定だった機体の引き渡しが中止され、早くても来週以降の納入になる見通し。
納入再開後、ボーイングは3月と4月に計11機の787を引き渡している。3月はユナイテッド航空(UAL/UA)へ2機納入。4月は9機で、エアリース・コーポレーション(ALC)へ3機、日本航空(JAL/JL、9201)へ2機、全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)、アメリカン航空(AAL/AA)、アトラス・アビエーション、ユナイテッド航空の4社へ1機ずつ引き渡された。
このうちJALの2機は787-9で、同社通算50機目(登録記号JA881J)と51機目(JA882J)の787。今回の引き渡しにより、現時点で発注済みの鶴丸塗装の機体は完納となり、今後受領する新造機は100%出資するZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)向けになるとみられる。
4月28日に会見したボーイングのデビッド・カルフーン社長兼CEO(最高経営責任者)は、「在庫となっている787の大部分は、年内に納入できると考えている」と、約100機ある787の納入見通しを示したが、残り6カ月で一掃するには月産16機以上の生産レートを実現しなければならない。
一方、これまでは787の最終組立工場は2拠点あり、ワシントン州シアトル近郊のエバレットとサウスカロライナ州ノースチャールストンで製造していたが、3月にノースチャールストンへ集約。2020年12月時点の月産レートは10機だったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、今年半ばから月産5機に再減産する計画になっている。
ボーイングの受注リストによると、4月末時点でキャンセル分を含む787の総受注は1886機で、標準型の787-8が656機、長胴型の787-9が1015機、超長胴型の787-10が215機。引き渡し済みの機体は1003機で、787-8が376機、787-9が566機、787-10が61機となっている。受注残486機のうち、787-8は40機、787-9が320機、787-10が126機で、787-9がもっとも多い。
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