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全日本空輸（ANA/NH）は5月24日、IATA（国際航空運送協会）が開発したスマートフォン用デジタル証明書アプリ「IATAトラベルパス（IATA Travel Pass）」の実証実験を始めた。新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の陰性証明やワクチン接種記録を管理するアプリで、羽田－ニューヨーク線とホノルル線の乗客を対象に、6月6日までの期間中約30人が実験に参加する見込み。
羽田空港でニューヨーク行きNH110便の乗客から提示されたIATAトラベルパスの画面を確認するANAの地上係員＝21年5月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
羽田空港でIATAトラベルパスの画面を表示したスマートフォンを手にするANAの地上係員＝21年5月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
IATAトラベルパスは、渡航者自身がアプリでパスポート情報を読み取り、顔認証で本人確認後、対象の医療機関でトラベルパス利用者が検査を受けたり、ワクチンを接種すると、医療機関がデジタル証明書を発行。渡航要件を満たすと、トラベルパスのアプリに緑地に白文字で「OK TO TRAVEL」と渡航可能であることが表示され、渡航者が空港で航空会社の地上係員にアプリを提示すると、渡航要件を満たしていることを確認できる。 現時点では陰性証明のみ管理しており、ワクチン接種歴は今後対応する見込み。
渡航時の出入国条件が頻繁に変わるため、IATAが運営する各国の最新渡航要件をまとめたデータベース「Timatic」を活用。渡航者と航空会社が渡航資格を正確に確認できるようにした。デジタル証明書により、従来は紙ベースだった陰性証明書と比べて偽造リスクへ減らせるとしており、情報を「デジタルパスポート」として航空会社や空港、政府機関が共有し、将来的な非接触旅行の実現につなげる。
個人情報はアプリ内で管理。サーバー上のデータベースなどで集中管理しないことで、個人情報の漏えいリスクを軽減するという。
IATAは、ANAを含む航空会社32社とトラベルパスの実用化に向けてプロジェクトを推進。国内の航空会社では、ANAと日本航空（JAL/JL、9201）がトラベルパスのアドバイザリーグループメンバーに参画している。また、シンガポール政府は5月1日から入国審査でトラベルパスを使用している。
今回の実証実験の対象者は、18歳以上でICチップ搭載のパスポートとICチップを読み取り可能なスマートフォンを所有しており、ANAが指定する医療機関でコロナウイルス検査を受けられる人。参加後のアンケート回答後に1000マイルを付与するほか、一部医療機関でコロナウイルス検査の割引も用意する。希望者はANAのウェブサイトから、出発5日前までに申し込む。
対象便は、期間中に8往復運航する羽田－ニューヨーク線のNH110/109便とホノルル線のNH186/185便。24日のニューヨーク行きNH110便では乗客1人がトラベルパスを利用し、同日のホノルル行きは6人が利用する見通し。
渡航可能を示す「OK TO TRAVEL」と緑地に白文字で表示されたIATAトラベルパスの画面。空港で航空会社の地上係員が搭乗手続き時に確認する＝21年5月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
渡航可能を示すIATAトラベルパスのデモ画面＝21年5月24日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire
ANAは、3月からスイスの非営利組織コモンズ・プロジェクト（The Commons Project、本部・スイス）が提供するデジタル証明書「コモンパス」の実証実験を開始。検査結果やワクチン接種履歴を示すもので、コモンパスを用いた実証実験は日本で初となった。現時点ではトラベルパスとコモンパスともに実証実験段階だが、デジタル証明書によるサービス提供を目指す。ANAによると、現時点で実用化の時期は決まっていないという。
国内の航空会社では、JALがトラベルパスとコモンパスに加え、米国内で利用が始まっている米Daon社が開発したアプリ「VeriFLY」も実証実験を進めている。
羽田空港でニューヨーク行きNH110便に搭乗するIATAトラベルパスの実証実験に参加した乗客＝21年5月24日 PHOTO: Yoshikazu TSUNO/Aviation Wire
羽田空港でニューヨーク行きNH110便に搭乗するIATAトラベルパスの実証実験に参加した乗客＝21年5月24日 PHOTO: Yoshikazu TSUNO/Aviation Wire
関連リンク
「IATAトラベルパス」の実証実験について（ANA）
全日本空輸
IATA Travel Pass Initiative
・ANA、米国行きで「IATAトラベルパス」実証実験 ホノルルとNY、参加者募集（21年5月11日）
・シンガポール政府、IATAトラベルパス採用 5月から入国審査、アプリでPCR検査結果共有（21年4月7日）
・成田空港、顔パス搭乗スタート 7月から本格運用、羽田も（21年4月14日）
・JAL、新型コロナの証明書アプリ実証実験 コモンパスなど3種（21年4月3日）
・ANA、スマホでコロナ陰性証明 NY行きで「コモンパス」実証実験（21年3月29日）
・ANA、新型コロナ検査証明アプリの実証実験へ IATAトラベルパスでデジタル証明書（21年3月10日）