5年前の2016年8月に東京オリンピック・パラリンピック開催に向けてオリンピック旗(五輪旗)を日本へ運んだ全日本空輸(ANA/NH)のボーイング777-300ER型機(登録記号JA781A)が5月11日、羽田空港から売却先の米国へ向かった。ANAを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による大幅な需要減少を受け、経年機を中心に機材の削減を進めており、同機も同型機では6番目の早期退役となった。
五輪旗を日本へ運んだ際は、小池百合子都知事がリオデジャネイロ大会の閉会式で引き継いだ後、NH2020便として経由地のフランクフルトから羽田空港へ2016年8月24日の午前11時15分ごろ到着。5分後には日本代表選手団を乗せた日本航空(JAL/JL、9201)のチャーター機JL8826便(777-300ER、JA735J)も到着し、五輪旗がお披露目された(関連記事)。
11日のフェリーフライトは、NH9431便として羽田を午前9時43分ごろ離陸し、経由地のホノルルには現地時間午後9時19すぎに着陸。給油後は午後11時19分ごろ離陸し、カリフォルニア州のモハーヴェ空港へ向かっている。日本初の777だったANAの777-200初号機(JA8197)も、2016年8月に同地へフェリーされた(関連記事)。
ANAの777-300ERは、2004年11月15日に就航。羽田-ロンドン線、ニューヨーク線などの長距離国際線を中心に投入している機材で、ANAHDは2020年に最初の退役機が出るまで28機運航しており、これまでに5機(JA731A-734A、JA777A)が退役済み。6機目の退役機となったJA781Aは2007年に引き渡された機体で、座席数は4クラス264席(ファースト8席、ビジネス52席、プレミアムエコノミー24席、エコノミー180席)だった。
ANAHDは、新型コロナの影響を受けて事業構造改革を2020年10月27日に発表。コスト削減の一環で、777-300ERを含む35機を退役させることになった。このうち777-300ERは13機で、年度当初の計画では退役予定に入っていなかった。
Aviation Wireの調べでは、機齢が10年以上の777-300ERは19機あり、退役済みの機体を除くと2006年受領のJA735AとJA736A、エコノミークラスが180席ある2007年から2008年にかけて受領したJA778AからJA783Aまでが今回の売却対象になるとみられる。
一方、ANAは777-300ERの新仕様機を2019年8月に就航させており、新造機6機を受領済み。このほかに既存機6機を改修する計画で、3機が改修を終えている。座席数は4クラス212席。ファーストが8席、ビジネスが64席、プレミアムエコノミーが24席、エコノミーが116席で、ファーストとビジネスはドア付きの個室タイプのシートを採用している。その後は777-300ERの後継機777-9(777X)を2023年ごろから導入する計画だが、ボーイングの開発が遅れている。
関連リンク
全日本空輸
五輪旗到着
・五輪旗、羽田到着 ANAとJAL機、SKY格納庫に並ぶ(16年8月24日)
777退役
・ANAの777-300ER、4号機が米国へ 新型コロナで国際線大型機削減(21年2月25日)
・ANAの777-300ER、退役始まる 国内初、3号機JA733Aが米国へ(20年12月3日)
・日本初の777、台風後の羽田から売却先へ ANA初号機JA8197(16年8月22日)
・ANAの777、初の退役 月夜に離日(16年5月24日)
ANAの機材計画
・ANA、機材を8%削減 22年度末は最大280機(21年5月2日)
・ANA、米西海岸など777-300ERを787置き換え 夏ダイヤで運航コスト抑制(21年1月26日)
・ANA、777Xは2年受領延期 経年機35機退役でコスト削減、777や737-700(20年10月27日)
・ANA、A380の3号機受領へ 10月内納入も日本飛来は未定(20年10月22日)
写真特集・ANA新777-300ER
(1)43インチ4Kモニターと引き戸付き個室ファーストクラス(19年7月13日)
(2)ドア付き個室ビジネスクラス(19年7月15日)
(3)世界最大の個人モニター備える1列10席エコノミー(19年7月17日)
(4)木目調パネルで落ち着いた空間(19年7月19日)