日本航空(JAL/JL、9201)は5月7日、長距離国際線の次世代機エアバスA350-1000型機を計画通り2023年度に就航させると発表した。現行のボーイング777-300ER型機の後継機で、欧米路線に投入する。IATA(国際航空運送協会)の予測では、世界的な国際線需要の回復が2024年以降になるとみられ、回復が本格化する前に準備を進める。
—記事の概要—
・777-300ERと同数13機
・ZIPAIRも787新造機受領へ
777-300ERと同数13機
JALは1990年代から主力大型機として運航してきた777を、2019年からエアバスの最新鋭機A350へ置き換えている。確定発注は標準型のA350-900が18機、長胴型のA350-1000が13機の計31機で、このほかにオプション(仮発注)で25機購入する契約を結んでいる。A350-900は主に国内線用777-200の、A350-1000は長距離国際線用777-300ERの後継となり、現在はA350-900を8機受領済みで全機を国内線に投入。次世代フラッグシップとなるA350-1000は、2023年度以降の就航を計画していた。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で旅客需要の低迷が続く中、A350導入による機材更新を計画通り進める背景には、経営課題である2050年の二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロ実現が挙げられる。また、777-300ERも就航から約20年が経過しており、A350への置き換えにより燃費向上や騒音低減、整備費抑制につなげる。
JALは2020年度までは、国内線に777-200と777-300、国際線に777-200ERと777-300ERを投入。このうち、日米でファンブレードに不具合が起きたプラット&ホイットニー(PW)製エンジンPW4000を搭載する国内線機材の777-200と777-300は、3月31日で運航停止のまま全7機(777-200:5機、777-300:2機)が退役した。現在は国際線から国内線に転用した5機の777-200ERと、長距離国際線機材である13機の777-300ERを運航しており、いずれもエンジンはGE製GE90を搭載している。777-200ERは2023年3月末までにすべて退役させ、A350-900に置き換える。
A350-1000は、新型コロナの影響で出張需要が減少する中、ビジネスクラスの座席数など、どのような客室仕様になるかが注目される。一足早く登場した全日本空輸(ANA/NH)の777-300ER新仕様機は、ファーストクラスとビジネスクラスを個室タイプにした(関連記事)。
ZIPAIRも787新造機受領へ
JALは7日に発表した2025年度までの中期経営計画で、2023年度まではコロナ影響による需要減退からの回復期、24年度以降を成長期としている。コロナ前の2019年度は18%を占めた大型機の構成比率を、2023年度には14%に引き下げる。
2023年度のJALグループ全体の機材数は229機(19年度比12機減)。大型機(A350/777)は31機(13機減)、中型機(787/767)は82機(1機減)、小型機(737)は65機(3機増)、リージョナル機(E190/E170)は32機(変わらず)、プロペラ機(ATR/Q400/SAAB)は19機(1機減)となる。この機材数には、LCCで連結子会社のZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)の787と、6月に連結子会社化する春秋航空日本(SJO/IJ)の737-800も含まれる。
ZIPAIRはJALが運航していた787-8を2機転用しており、今後は年2機ずつ増機して2024年度には10機体制を構築する計画。今年度に導入を計画している3号機と4号機のうち、1機は新造機となり、残る1機は元JAL機になるが、ボーイングの製造工程で不具合が生じたことなどから、JALによると現時点ではどちらが新造機になるかは決まっていないという。当初は3号機を新造機にする計画だった。
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