日本航空(JAL/JL、9201)が運航するボーイング787型機が50機を超えた。2012年の就航から9年、まだ787が「7E7」と呼ばれていた2004年の発注から数えると17年が過ぎた。就航当初は国際線のみに投入していたが、2019年からは国内線幹線でも使用している。
客室仕様を見ると、標準型の787-8は国際線用のE12(2クラス186席)、E03(2クラス206席)、国内線用のE21(3クラス291席)の3種類、すべて国際線で使用している長胴型の787-9はE71(3クラス195席)、E91(3クラス203席)、E92(3クラス239席)と3種類ある。
4月に相次いで引き渡された50号機(登録記号JA881J)と51号機(JA882J)はともに787-9で、客室は長距離国際線を中心に投入するE91仕様だった。
本特集では、50機を超えたJALの787の客室仕様の変化を取り上げる。
—記事の概要—
・20機分のオプション
・787-8は2クラスに
・787-9は777並み座席数も
・787-8国内線仕様
20機分のオプション
JALは2004年12月22日に、当時7E7だった787を確定30機、オプション20機発注する方針が決まったと発表。2008年度から国際線と国内線に新中型機として導入し、当時36機あった767や22機のエアバスA300-600型機を置き換えるとしていた。短距離型として7E7-3(座席数:約300席、航続距離:約6400キロ)、長距離型として7E7-8(約250席、約1万4000キロ)を導入するとしていた。
その後、2005年1月28日に、ボーイングは仮称の7E7に正式名として787を名付けたと発表。JALは同年11月24日に、ロールス・ロイス製とGE製が選べるエンジンについて、GE製GEnxを選定したと発表した。
787-3と787-8のうち、日系2社しか発注しなかった787-3は、開発遅延もあり全長が同じ787-8に吸収される。そして初号機受領を目前にした2012年2月15日に、長胴型787-9を発注すると発表した。これにより、JALの787は787-8が25機、787-9が20機の計45機と、オプション(仮発注)が20機となった。787-9は10機が787-8の変更、残り10機が新規発注となり、787-8より約50席多い250席程度の座席数になることが明らかになった。
JALが現在受領している787は、787-8が29機と787-9が22機の計51機。787-8のうち、4機は2017年9月に導入が発表され、2019年10月27日に就航した国内線機材(E21仕様)になる。20機分のオプションのうち、4機の787-8と2機の787-9の計6機分が行使されたことになる。
51機のうち、787-8の初号機(JA825J)と2号機(JA822J)は現在、JALが100%出資する中長距離国際線LCCのZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)にリースされている。ZIPAIRは年に2機程度ずつ増機していく計画で、5年間で10機体制となる見込み。今後は新造機の導入も予定している。当初の計画では3号機は新造機を受領する計画だったが、3号機と4号機はJALから2機の787-8をリース導入する見通しで、5号機と6号機は今後新造機かJAL機かを明らかにする。
787-8は2クラスに
787-8が就航した2012年当時の客室仕様は、「E01」と呼ばれる2クラス186席(ビジネス42席、エコノミー144席)で、ビジネスクラスのシートは「JALシェルフラットネオ」でライフラットタイプが2-2-2席配列、エコノミーは2-4-2席配列。その後エコノミークラスを増やした2クラス206席(ビジネス30席、エコノミー176席)のE03仕様に改修され、E01仕様の機材は存在しない。
JALが国際線で使用している787-8は、ZIPAIRへリース中の2機を除くと、JA821JからJA835Jまでの13機がE03。JA836Jから25機目のJA845Jまでは、ビジネスクラスに777-300ERと同じフルフラットシート「スカイスイート」を採用した新仕様機「スカイスイート787」で、座席数が3クラス161席(ビジネス38席、プレミアムエコノミー35席、エコノミー88席)のE11仕様になった。
しかし、27年ぶりの路線再開で、2019年3月31日に就航した成田-シアトル線を皮切りにプレエコのないスカイスイート787が飛び始めた。2クラス186席のE12仕様(ビジネス30席、エコノミー156席)で、E11からビジネスを8席減らし、プレエコをすべてなくしてエコノミーを25席増やしたものだ。
一方、エコノミーは世界でJALのみになった1列8席仕様を維持し、9席の他社と快適性で差別化を図っている。上級会員の無料アップグレードなどに使われることも多いプレエコはなくし、その分エコノミーの供給量を増やした。
787-9は777並み座席数も
国際線機材がすべて2クラスになった787-8に対し、787-9は3つある座席配列すべてがビジネスとプレエコ、エコノミーの3クラス構成だ。エコノミーは787-8と同様、1列8席仕様を維持している。
2015年7月1日に就航した最初の客席仕様は3クラス195席(ビジネス44席、プレミアムエコノミー35席、エコノミー116席)のE71で、シートはE11と同じものだが34席多い。現在E11の機体はE12にすべて改修されたため、これまでE11が担ってきた役割はE71の787-9に移行したと言える。
次に登場したのは、2017年7月31日に就航した3クラス203席(ビジネス52席、プレミアムエコノミー35席、エコノミー116席)のE91仕様。E11やE71が欧米など長距離路線を主眼に置いていたのに対し、E91は東南アジアなど中距離路線をターゲットにした仕様だ。
シートはビジネスクラスのみ変更され、フルフラットシートを斜めに配置する「ヘリンボーン配列」の「スカイスイートIII」になった。2016年6月に就航した777-200ERの新仕様機で採用したシートを、787-9の機体に合わせたものだ。
さらに現在はE91からビジネスを半数近い24席減らし、プレエコも2列分14席なくし、エコノミーを約1.6倍の74席増やした3クラス239席(ビジネス28席、プレミアムエコノミー21席、エコノミー190席)のE92仕様が登場している。
全体の座席数では、退役が進む777-200ERのW61仕様(3クラス236席:ビジネス42席、プレミアムエコノミー40席、エコノミー154席)に匹敵する座席数だ。777はエコノミーが1列9席なのに対し、JALの787は8席なので、E92は上級クラスの席数を減らして全体の座席数を稼いでいるともいえる。
787-8国内線仕様
JALの787で唯一国内線に投入されているのが、2019年10月27日に就航した国内線仕様の787-8だ。全4機で、座席数が3クラス291席(ファースト6席、クラスJ58席、普通席227席)のE21仕様となる。
シートの基本仕様は、同年9月1日に就航したエアバスA350-900型機(3クラス369席:ファースト12席、クラスJ94席、普通席263席)で採用したものを踏襲。ファーストクラスが2-2-2席配列の1列6席、クラスJが2-3-2席配列の1列7席、普通席が3-3-3席配列の1列9席となった。JALの787で、エコノミークラスに初めて1列9席を採用した。
置き換えの主な対象となるのは767-300ERで、3クラス252席(ファースト5席、クラスJ42席、普通席205席)と比べて39席増えた。
全クラス全席に電源コンセントと充電用USB端子、個人用画面を備え、機内インターネット接続「JAL Wi-Fiサービス」を無料で提供。A350と同様、出発して地上走行を開始してから、着陸後に駐機場へ到着するまで利用できる。映画などのビデオコンテンツは、途中で視聴を中断しても次回搭乗時に続きを楽しめるようにした。
22年で就航10周年
就航から9年で、国際線を飛ぶ787-8の客室仕様はE01からE03、E11からE12と進化し、787-9はE71とE91、E92がある。変遷を見ると、787-8ではビジネスは30席とし、残りはエコノミーを1列8席のまま極力多くするという意図が見える。プレエコは上級会員の無料アップグレードなどに使われることも多く、787-8の機体サイズではエコノミーをより多くしたほうがいいとの判断だ。
787-9は路線の特性に応じてビジネスクラスのシートや席数を調整し、プレエコは3列から5列、残るエコノミーはLCCの1便分に相当する190席の仕様を用意することで、単価の低い路線でも収益性を保てるようにしている。
JALの787は、来年2022年で就航10周年を迎えるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、これまで大きな収益減であった出張需要の回復は、観光需要よりも遅れると言われている。787の客室仕様も、プレエコの座席数などが見直される可能性もありそうだ。
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日本航空
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