エアライン, 解説・コラム — 2013年6月27日 18:25 JST

ANA伊東社長「JAL再生やり過ぎだが、他力本願ダメ」 株主総会、787やLCC焦点

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 4月にホールディングス制へ移行し、初の株主総会を迎えたANAホールディングス(9202)。6月27日に都内で開いた総会では、バッテリートラブルを起こしたボーイング787型機や、エアアジアとの合弁を解消した低コスト航空会社(LCC)事業、昨年の公募増資後の株価下落に関する質問が株主から出た。

 日本航空(JAL、9201)との競争環境に関する質問には、伊東信一郎社長が「JAL再生は、やり過ぎと言わざるを得ない」と応じた。

「安全は経営の基盤。社会への責務」

都内で行われたANAホールディングスの株主総会=6月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 総会では、事業会社である全日本空輸(ANA)の社長を務める篠辺修取締役が、787のバッテリー不具合と欠航について陳謝。通常飛行中はバッテリーを使用しないことや、767や777と比べて定時出発率が高いことを説明し、運航再開に理解を求めた。

 総会会場には技術者を出席させ、株主からの質問に応じられるようにしたという。篠辺氏は「安全は経営の基盤であり、社会への責務」と述べ、今後も安全を最優先して787を運航していくと語った。

 株主からは、1月16日から5月末まで787が運航停止したことによる減収について質問が出た。財務担当の殿元清司専務は、「3月末までの前期中に70億円程度、4月からの2013年度は55億円程度で、合計125億円の減収要因」と述べ、ボーイングに対して相応額の賠償を求める交渉を始めたと説明した。

「現場は必死に戦っている」

 LCC事業は、25日にマレーシアのエアアジアとの合弁を解消し、エアアジア・ジャパン(WAJ)をANA主導の新たなLCCとして再出発させる。伊東社長は「マレーシアのビジネスモデルのままでは、日本のマーケットで厳しいとの判断に至った」と合弁解消の経緯を説明した。

 一方で、「LCCは成長戦略の柱であることは変わりない」(伊東社長)とし、7月末に発表予定の新LCCで、成田空港を拠点とするLCC事業を続ける意向を示した。

 株主からは、利用実績が好調なピーチ・アビエーション(APJ)との連携の可能性について質問が出た。アジア戦略担当の竹村滋幸専務は「APJは持分法適用会社なので、個々の経営に直接関与できない。即APJとどうこうするというのは、なかなか難しい」と語った。

 総会にはWAJの客室乗務員もいち株主として出席。「ロードファクター(座席利用率)の低迷で苦戦を強いられているが、現場は必死に戦っている」と現状を訴え、新LCCでは現在WAJが使用しているエアバスA320型機を導入するのかを尋ねた。竹村専務は「有力な選択肢だが、決定していない」と応じた。

「JAL再生はやり過ぎだが、他力本願はダメ」

 昨年の公募増資による株価低迷について、伊東社長は「大変心苦しく思っている」と述べた。航空機の調達や資本増強などに用いた公募増資について、「厳しい競争環境激化の中で勝ち残り、イベントリスクに耐える力をつけるためにも、早期の資本増強が不可欠と判断した」と説明した。

 今後については、「早期に利益創出に結びつけ、希薄化分を上回る収益を確保し、株主価値を実現したい」と理解を求めた。

 また、株主からは「JALと同じ土俵で戦っているのか」との質問が出た。伊東社長は「最終利益を見ると、もっとも差が開く。われわれも過去にない良い決算だと思っているが、JALの最終利益は1700億円。合法だが400億円から500億円の法人税が免除され、今後もこの状態が続く。決して平等な競争ではない」と説明した。

 「JALの再生はやり過ぎと言わざるを得ない。今後の格差是正について、国土交通省も羽田の増枠などで格差是正を図ると言及している。いみじくも、国交省自体が、競合他社への配慮を欠いたとしている」と、改めてJALの再生方法を批判した。

 続けて伊東社長は、「そうは言っても、他力本願ではダメであり、もっとも大切なことは、われわれ自身がしっかり自らの足で立ち続けること。がんばって構造を変え、強い会社に自らなっていくという強い思いを持って、全従業員が努力していくことだ」と語り、株主に支援を求めた。

 総会の入場者数は前回より1298人少ない3622人。所要時間は2時間17分だった。

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