日本航空(JAL/JL、9201)は3月23日、約1000人の客室乗務員が全国47都道府県で観光資源の発掘などに携わる「ふるさと応援隊」の決起集会を都内で開いた。都道府県ごとに出身者やゆかりのある客室乗務員を約20人任命し、9月末まで乗務と並行して毎月1週間程度の時間を活動に充てる。JALでは、秋ごろには事業として成立するようにしていきたいという。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で国際線を中心に大量減便が続く中、JALは客室乗務員を活用して地域活性化を進める新たな部署「地域事業本部」を2020年11月1日付で立ち上げた。ふるさと応援隊の約1000人は12月1日に任命され、ビジネススキルの研修などを受けていたものの、緊急事態宣言の影響で1月に予定していた決起集会は延期。1月から活動を本格化させる計画だったが、当初はビデオ会議システム「Zoom」を活用した各地の支店との課題の洗い出しや、オンラインの学生向けお仕事講座など、限定的に活動を行ってきた。
23日の決起集会であいさつした地域事業本部長を務める執行役員の本田俊介氏は、「日本の人口減少はJALの課題でもあり、人の流動を作ることが課題。コロナで社会や(航空会社に対する)ニーズが変わっていることを認識してほしい。ライフスタイルとワークスタイルが変わっており、宿泊の新しいニーズを見つける必要がある」と、出席した客室乗務員に呼びかけた。
応援隊を代表して決意表明した客室乗務員の久村菜摘さんは、秋田県を担当。学生時代に友人が秋田県出身だったことから秋田に興味を持ち、都内で秋田の郷土料理屋でアルバイトしたという久村さんは、「最初はきりたんぽくらいしか知らなかったが、秋田は広いので地域の特産品を紹介し、地域との架け橋になりたい」と話した。
決起集会は都内の会場以外に、Zoomでも客室乗務員が参加。会場に集まった10人は閉会後、新橋のアンテナショップ「とっとり・おかやま新橋館」と有楽町のJALプラザに分かれて地域の応援活動を実施した。
とっとり・おかやま新橋館で観光PRチラシを配った岡山県担当の井上美月さんは、隣接する兵庫県出身。子供のころから家族で旅行に訪れたりしていたという。「シャインマスカットなど袋詰めで売っているフルーツを、東南アジアのようにそのまま手軽に買えるようにできないかなど、岡山に足を運んでもらえるようにしたい」(井上さん)と話した。
JALではふるさと応援隊のほか、客室乗務員にゆかりがある地域へ移住して地域活性化に取り組む「ふるさとアンバサダー」制度を2020年8月に立ち上げ、11人が北海道と東北、四国、九州で活動中。長崎県平戸市による平戸城に宿泊できる「城泊(しろはく」の取り組みには、アンバサダーもかかわったという。
本田氏によると、コロナ前にあった出張需要のうち、2割程度はオンライン会議の普及や働き方の見直しで消失するとみており、新たな需要の掘り起こしは不可欠だという。休暇中に一部の時間を仕事に充てる「ワーケーション」も、JALは2017年から自社で導入したり、旅行商品を販売しているが、「ただワーケーションをやるだけでは一定以上広がらないので、企業がやる目的を作る必要がある」(本田氏)として、ワーケーションの制度設計なども応援隊で取り組みたいという。また、ふるさと納税の手数料収入など、応援隊による活動が事業として成立するようにしていく。
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