例年は流氷などを目当てに、国内外から多くの観光客が訪れるオホーツクだが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で訪日客はすっかり途絶えてしまった。しかし、海外旅行の本格的な回復が3年程度かかると見込まれる中で、ワクチン接種が進むなどの条件が整えば、日本人の国内旅行は比較的早期に回復基調に入る可能性はある。
ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下のLCC、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)が4月以降を対象とするセールを3月2日から始めたところ、最低価格が999円という設定だったこともあり、好調なすべり出しだったという。サーバーが一時つながりにくくなるなどLCCのセールへの関心は高いようで、緊急事態宣言が首都圏の1都3県で3月21日まで延長されたものの、春の行楽シーズンになれば手軽な運賃で出掛けたいというニーズは、まだ残っているようだ。
ピーチは今年に入り、1月22日に中部(セントレア)-那覇線と石垣線の沖縄2路線、2月10日に成田-女満別線、同月19日には成田-大分線と、新型コロナの影響で国内線も大幅な減便が続く中、新路線を立て続けに開設した。森健明CEO(最高経営責任者)は、「新路線は国際線と国内線の順番を入れ替えた」と路線拡張を国内にシフトした結果だと話す。
私は新規4路線のうち、北海道の就航地では札幌(新千歳)と釧路に続き3都市目となる女満別から成田行きの初便に乗ってみた。当初は女満別で成田行きが出発するシーンを撮って帰京しようと考えていたのだが、減便によりその日のうちには帰れないことがわかり、女満別発初便の様子を取材しながら帰ることにした。
—記事の概要—
・寿司店移転後にカウンター
・網走まで30分
・機内販売は品数セーブ
寿司店移転後にカウンター
就航日の2月10日は、羽田から女満別入りした。ターミナル1階に到着し、全日本空輸(ANA/NH)や日本航空(JAL/JL、9201)など航空会社のカウンターが並ぶ列を探しても、ピーチの看板が見つからない。ふと向かい側に目をやると、ひっそりとピーチの自動チェックイン機が置かれていた。
「実はお寿司屋さんに移転していただき、ここにカウンターを構えたんですよ」と、ピーチの広報担当者が説明してくれた。
地方空港の場合、国内線は大手2社分程度しかカウンターのスペースがなく、後から就航する航空会社はカウンターの設置場所に苦労するケースが多々ある。女満別も同様で、カウンターに向かって左側に有人の手荷物窓口が2カ所、右側に自動チェックイン機が3台あるが、設置スペースの関係でチェックイン機は同社で主流の大型液晶モニターを2つ使った段ボール製ではなく、小型のものだった。
ではお寿司屋さんはどこへ移転したのか。土産物店や手荷物検査場がある2階へ行くと、ピーチに場所を譲った立ち飲みのお寿司屋さん「縁戸(えんど)」があった。成田から初便が到着する午後4時ごろまで3時間近く時間があったので、お昼ご飯をここで食べることにした。
網走まで30分
「すいません、ご飯切れちゃったんで少し待ってもらえますか。いま取りに行ってます」。のれんをくぐり、大きな窓から明るい光が差すおしゃれな店内に入ると、店長の中本哲也さんが恐縮した表情で私に声を掛けてきた。「お昼に予定よりも(握り寿司よりご飯を使う)丼ものが出てしまって。うちの本店が網走にあるので取りに行ってます」と中本さんは言う。
女満別空港から網走の中心街までは車で片道30分ほど。女満別と言われると網走とは別のエリアのような印象を持つ人もいるだろうが、オホーツクや知床観光の玄関口だ。しかし、今は女満別発着の便数が減っているので、中本さんたちは昼前から夕方まで空港で営業後、夜は網走の店に戻ってすしを握っているという。
「コロナ前は本店も中国や台湾、香港からのお客さんが多かったです。いま外国の方はゼロですが」と、コロナ前後の様子を話してくれた。「この店も夜は東京へ帰る前に一杯、というお客さんが結構いらして楽しかったですよ。またあんな風になるといいですね」と懐かしむ。
女満別空港のお店は2018年8月にオープン。訪日客の増加も見込んでの出店だったようで、この時は現在ピーチのカウンターになったターミナル1階にあり、ピーチ就航1週間前の2月3日から2階での営業を始めた。
私がピーチのカウンターをすぐに見つけられなかったのと同様、「1階のころはターミナルに入ってすぐ航空会社のカウンターに目がいってしまうせいか、お客さんからお店の前まで来ているのに電話がかかってきたこともありました。場所ですか? 今の方がいいです」と、出発前の乗客が主なターゲットゆえ、保安検査場のそばに移転したのは好都合だったようだ。
機内販売は品数セーブ
お寿司を思わず頼みすぎて少々予算オーバーになってしまったが、空腹を満たした私は展望デッキで成田からの初便MM593便を待った。到着時刻が近づくにつれて雪の降り方が激しくなってきたが、無事定刻の午後4時に到着した。機材はエアバスA320型機(1クラス180席)で、元バニラエアのJA10VAが使用された。
首都圏から女満別空港には、羽田空港からJALとエア・ドゥ(ADO/HD)、道内は新千歳空港からANAがANAウイングス(AKX/EH)の運航で、丘珠空港からはJALグループの北海道エアシステム(HAC、NTH/JL)が乗り入れている。LCCの女満別就航は初めてで、オホーツクの流氷や、ピーチ既存の釧路路線と合わせた「ひがし北海道」と呼ばれる道東地域の周遊旅行を呼び込む。
成田-女満別線の運航スケジュールは、3月27日までの冬ダイヤでは女満別行きMM593便が成田を午後1時55分に出発し、午後4時に着く。成田行きMM594便は午後4時40分に女満別を出発して、午後6時55分に到着する。計画は1日1往復だが、新型コロナの影響で曜日運航となる。
3月28日からの夏ダイヤも計画は1日1往復だが1時間前倒しとなり、女満別行きMM593便が成田を午後0時55分に出発し、午後3時5分に着く。成田行きMM594便は午後3時45分に女満別を出発して、午後6時に到着する。網走の中心部でお昼を食べて午後2時すぎまで過ごしても、午後3時ごろには空港へ到着できる。成田では到着が多少前後しても、午後7時ごろには空港を出られる到着時刻だ。
成田発初便のMM593便は、乗客数が169人(幼児ゼロ)と搭乗率が9割を超えたが、私が乗った女満別発初便の成田行きMM594便は63人(幼児ゼロ)と、コロナ影響下で想像がつく範囲の乗客数だった。こればかりはやむを得ないだろう。
MM594便の出発は、防氷防雪作業や管制からの指示で定刻の午後4時40分から27分遅れの午後5時7分となり、同20分に離陸した。滑走路に進入すると、地上走行中に付着した雪などを落とすため、エンジンパワーを上げてしばらく間を置いての離陸となった。
機内アナウンスでは、機内の空気が3分で入れ替わること、除菌作業をしているので安心してほしいといった案内がなされていた。女満別発の初便とあって、客室乗務員が乗客に記念品を配っていた。
機内サービスは、コロナの影響で品数を減らす状況が続いている。この日は水とリンゴジュース、除菌スプレーに絞って販売していた。私はお寿司を食べてからは何も飲んでいなかったので、リンゴジュースを購入した。
午後6時27分になると、ベルトサインが点灯。同42分には最終の着陸態勢に入った。成田はA滑走路(RWY16R)へ同55分に着陸し、午後7時1分に到着した。約2時間のフライト中はずっと自席にいたが、リンゴジュースを撮ったりしていたこともあり、思いのほか時間が経つのは早かった。
第1ターミナルまでは連絡バスによる移動で、ターミナルではピーチ成田空港所の潮田(うしだ)高志所長らが乗客を出迎えた。手荷物受取所から一般エリアに出たのは、午後7時15分だった。
女満別線に限らず、ピーチの成田到着便から鉄道やバスなどに乗り継ぐ場合は、到着時刻から最低30分はみて列車などの予定を考えた方がいいだろう。
春の訪れとともに、ひがし北海道への観光需要も早期に回復して欲しいものだ。
*写真は18枚。
運航スケジュール
3月27日まで
MM593 成田(13:55)→女満別(16:00)
MM594 女満別(16:40)→成田(18:55)
3月28日から6月30日まで
MM593 成田(12:55)→女満別(15:05)
MM594 女満別(15:45)→成田(18:00)
関連リンク
ピーチ・アビエーション
女満別空港
女満別就航
・ピーチ、成田-女満別就航 LCC初、雪の”ひがし北海道”到着(21年2月10日)
・ピーチ、成田-女満別・大分2月就航 1日1往復ずつ(20年12月18日)
ピーチ
・ピーチ、黄色いバニラエア塗装機就航 初便は関空から奄美へ(21年3月5日)
・ピーチ、大分就航 成田から1日1往復、温泉など旅行需要狙う(21年2月19日)
・ピーチ、プラス2000円でフライト変更無料の新運賃(21年2月9日)
・ピーチ、中部-那覇・石垣就航 コロナで式典中止(21年1月22日)
・ピーチ、中部-札幌・仙台就航 2路線同時開設(20年12月24日)