全日本空輸(ANA/NH)が長距離国際線に投入している大型機ボーイング777-300ER型機のうち、4号機(登録記号JA734A)が2月25日に羽田空港から米国の売却先への経由地となるアラスカ州アンカレッジへ向かった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で国際線の大幅な需要減少が続く中、ANAを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は777-300ERのうち経年機の退役を2020年12月から始めており、今回の4号機で同型機の退役は3機となった。退役した777-300ERの売却先へのフェリーフライトは、今年度内では今回が最後となる見込み。
欧米の長距離国際線を中心に投入している777-300ERは、2004年11月15日就航。「ジャンボ」の愛称で親しまれたボーイング747-400型機の後継機で、1路線目は成田-上海線だった。最初の退役機となったJA733Aが2020年12月1日に日本を離れるまで、ANAは28機の777-300ERを保有していた。
JA734Aは、2006年3月に引き渡された機体。ロサンゼルスを現地時間2月14日に出発した羽田行きNH125便が最後の商業運航となった。同機は2013年3月3日から東京オリンピック・パラリンピック招致に向けてラッピング機として運航したほか、2014年11月からはANAが公式サポーターとなったUNESCO(ユネスコ、国際連合教育科学文化機関)のデカールを貼っていた。
これまでに退役したANAの777-300ERは、日本を離れた日を基準とするとJA733A、今年1月19日に羽田をたったJA732A、今回のJA734Aの計3機。777のうち長胴型の777-300全体でみると、7機保有していた国内線機材の777-300も2機退役済みで、1月26日にJA756A、2月10日にJA757Aが羽田から売却先の米国へ向かった。
ANAHDは、新型コロナの影響を受けて事業構造改革を2020年10月27日に発表。コスト削減の一環で、777-300ERを含む35機を退役させることになった。35機の内訳は、777-300ERが13機(年度当初計画はゼロ)でもっとも多く、国内線用大型機777-300が2機(同)、777-200/200ERが8機(当初計画は1機)、中型機の767-300/300ERが6機(同1機)、小型機の737-700が4機(同3機)、737-500が2機(6月までに退役済み)となっている。
13機が退役する777-300ERのうち、今年度内の売却先へのフェリーフライトはJA734Aが最後となる見通し。
ANAの777-300ERは、機齢10年以上20年未満の機体が退役済みの機体を含めて19機あり、この中から初期導入機を中心に退役が進むとみられる。777-300ERの後継機で、今春から受領予定だった次世代大型機ボーイング777-9(777X)は、導入を2年程度遅らせる。
ANAの777-300ERのうち、10年に満たない機体は9機あり、2019年8月からは新仕様機(4クラス212席:ファースト8席、ビジネス64席、プレミアムエコノミー24席、エコノミー116席)を投入している。
また、777-300ERのエンジンはGE製GE90-115Bで、2月20日(日本時間21日)にエンジントラブルが起きたユナイテッド航空(UAL/UA)の777-200(N772UA)とは異なるエンジンを搭載。日本の国土交通省航空局(JCAB)が運航停止としているのはプラット&ホイットニー製PW4000シリーズを搭載した777のみで、GE90搭載機は運航停止の対象外となっている。
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全日本空輸
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