FAA(米国連邦航空局)は現地時間2月23日(日本時間24日)、米プラット&ホイットニー製航空機用エンジンPW4000に対し、緊急のAD(耐空性改善命令)を発効した。20日(日本時間21日)に起きたユナイテッド航空(UAL/UA)のデンバー発ホノルル行きUA328便(ボーイング777-200型機、登録記号N772UA)のエンジン損傷トラブルに対するもので、エンジン前部にある大型のチタン製ファンブレードに対する熱音響画像(TAI)検査を運航する航空会社に指示した。
対象エンジンは、PW4074、PW4074D、PW4077、PW4077D、PW4084D、PW4090、PW4090-3。FAAは、TAI検査によりファンブレードの内面や目視検査で発見できない部分の亀裂を調べる必要があると判断した。
FAAによると、N772UAが搭載するエンジンの第1段LPC(低圧圧縮機)ブレードが飛行中に故障し、エンジン火災が飛行中に発生したことを受け、今回のADを出したという。
NTSB(米国家運輸安全委員会)によると、777に2基あるエンジンのうち、損傷の大半はトラブルが起きた右側の第2エンジンに限られ、機体の損傷は軽微だったという。第2エンジンのファンブレードは2枚折れており、うち1枚は根元から折れていた。
PW4000の検査間隔は、従来フライトサイクル(飛行回数)6500回ごとで、フライトサイクル1回は離着陸1回と定義されている。
日本国内では、昨年12月4日に同じエンジンを搭載する日本航空(JAL/JL、9201)の777-200(JA8978)が、羽田行きJL904便として那覇空港を離陸直後、左エンジンが損傷する「重大インシデント」が発生。那覇へ引き返した。乗客乗員にけがはなかったが、左エンジンに22枚あるファンブレードのうち2枚に損傷が見つかり、このうち1枚に疲労破壊の特徴である模様がみられた。このため、日本では12月から従来の半分にあたるフライトサイクル3250回ごとに検査間隔を短縮している。
国交省は今回のトラブルを受け、日本時間21日に全日本空輸(ANA/NH)とJALにPW4000を搭載する777-200と長胴型777-300の運航停止を指示。対象機はANAが19機、JALが13機の計32機で、両社とも国内線に投入している。両社が国際線を中心に運航している777-300ERなど、GE製GE90エンジン搭載機は対象外となる。
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