米コロラド州のデンバー国際空港近くで現地時間2月20日(日本時間21日)に起きたユナイテッド航空(UAL/UA)のデンバー発ホノルル行きUA328便(ボーイング777-200型機、登録記号N772UA)のエンジン損傷トラブルについて、NTSB(米国家運輸安全委員会)は777に2基あるエンジンのうち、損傷の大半は右側の第2エンジンに限られ、機体は軽微な損傷だったと発表した。第2エンジンのファンブレードは2枚折れており、うち1枚は根元から折れていた。
UA328便には乗客229人と乗員10人の239人が乗っており、離陸直後に右エンジンにトラブルが発生してデンバー空港へ引き返した。空港周辺の住宅地や公園などには、インレット・カウルなどエンジン部品の一部が落下したが、乗客乗員を含めけが人はなかった。
N772UAのエンジンは米プラット&ホイットニー製PW4000で、シリーズのうち推力7万7000ポンドのPW4077を2基搭載。NTSBによると、右エンジンのインレットとカウリングが脱落し、2枚のファンブレードが折れていた。このうち1枚は根元付近から折れており、残りのファンブレードにも先端に損傷がみられた。現時点で原因などはわかっておらず、調査を継続している。
PW4000のファンブレードが破断した事例として、日本で昨年12月4日に同じエンジンを搭載する日本航空(JAL/JL、9201)の777-200(JA8978)が、羽田行きJL904便として那覇空港を離陸直後、左エンジンが損傷する「重大インシデント」が発生して引き返している。同便には乗客178人(幼児3人含む)と乗員11人の計189人が搭乗していたが、けがはなかった。
JA8978は、PW4000シリーズのうち推力7万4000ポンドのPW4074を搭載。左エンジンに22枚あるファンブレードのうち2枚に損傷が見つかり、破損した2枚のうち1枚に疲労破壊の特徴である模様がみられた。同機は那覇で修理を終え、2月16日に羽田へ戻っている。
国土交通省航空局(JCAB)は今回のトラブルを受け、日本時間21日に全日本空輸(ANA/NH)とJALにPW4000を搭載する777-200と長胴型777-300の運航停止を指示。対象機はANAが19機、JALが13機の計32機で、両社とも国内線に投入している。両社が国際線を中心に運航している777-300ERなど、GE製GE90エンジン搭載機は対象外となる。
日本ではPWエンジン搭載の777が急遽運航停止となったことで、22日は出発遅延などの影響がみられた。通常は777-300で運航しているJALの羽田発那覇行きJL907便は、GEエンジンの国際線機材777-200ERに変更。定刻は午前8時50分だったが、約1時間40分遅れの午前10時28分に出発した。
また、FAA(米国連邦航空局)も現地時間21日(日本時間22日)に、PWエンジンを搭載する777に対する緊急のAD(耐空性改善命令)を発効する方針を固め、対象機の即時点検とファンブレードの点検間隔を早めることを求めた。ユナイテッド航空は、同エンジンを搭載する24機の777を運航から一時離脱させている。ボーイングによると、全世界の対象機は運航中の機体が69機、地上保管中が59機の計128機あるという。
関連リンク
NTSB
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ユナイテッド航空
Pratt & Whitney
Boeing
ボーイング・ジャパン
N772UA関連
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PW4000搭載機
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