スカイマーク(SKY/BC)は2月5日、昨年12月に男性副操縦士(当時24)が初乗務時に運航中のコックピットから景色を写真撮影し、乗務後に自身のTwitterアカウントから投稿していたことについて、国土交通省航空局(JCAB)に是正措置を報告した。男性は現在副操縦士職を解かれ、地上で勤務している。
海外では、パイロットがコックピットから景色を撮影することについて、安全運航に支障がない範囲で制限していないが、国交省は今回、航空法が定める操縦者の見張り義務などに違反するとしている。
—記事の概要—
・コンプライアンス教育の徹底
・官民の処分バランス妥当か
コンプライアンス教育の徹底
男性がコックピットから写真撮影した乗務便は、2020年12月21日の羽田午後5時5分発那覇行きBC521便(ボーイング737-800型機、登録記号JA73AB)。乗客65人と乗員6人(パイロット2人、客室乗務員4人)が乗っていた。男性は羽田空港を離陸後の午後5時30分ごろ、私物のスマートフォンでコックピット前方の景色を撮影し、Twitterに翌日投稿していたことが内部通報で発覚した。
スカイマークは5日、国交省に対して航空法・社内規定の厳守、コンプライアンス意識の教育、運航中のコックピット内での携帯電話の使用制限強化を再発防止策として報告した。
スカイマークでは、2010年にもコックピット内での写真撮影などが発生。国交省は「社員に対するコンプライアンス遵守の意識付けの徹底が不足しており、社内安全管理体制が不十分だった」として、再発防止と安全運航を同社に求めている。
官民の処分バランス妥当か
一方、海外では安全が確保され、運航に支障がない範囲であれば、パイロットがコックピットから景色を撮影することを原則として制限していない。
今回、国交省が航空法第71条の2に定める「操縦者の見張り義務」の違反を根拠としたことに対しては、「これがダメなら交代で食事中も見張り義務違反ではないか」と、2人のパイロットが交代で食事をとるケースを例に、国交省や同社が男性に下した処分に対して、国内外のパイロットからは処分内容が過剰ではないかとの指摘が多くみられた。男性の場合、景色を撮影した時点では機長が操縦していた。
一方で、男性が初乗務であったことから、些細なことでも決まりを守ることの重要性を指摘する声もあった。
今回の処分を過剰とみる声の背景には、航空会社を監督する立場である国交省で、飲酒問題を起こした機長が解雇されず、乗務停止で済んだ問題がある。2019年12月23日に飛行検査センター所属の40代男性機長が、乗務前日に生ビールとハイボール、ロックの泡盛をそれぞれ2杯ずつ計6杯飲み、乗務前のアルコール検査で0.278mg/lのアルコールが検出されて乗務できなかった際、航空会社であれば解雇されるところを、職を奪われない乗務停止60日間の処分にとどまった。同時期に同様の問題を起こしながら、民間と比べて軽すぎるとの指摘がある。
国交省と有償旅客を乗せる航空会社で違いはあるものの、航空機を安全に運航しなければならない点は共通しており、乗客の有無は処分内容とは次元の異なるものだ。社会問題化したパイロットの飲酒については、航空会社のトップが自ら厳しい処分を下す中、赤羽一嘉国交相は給与の自主返納など、法的責任以前の自発的な措置を講じておらず、当事者意識の欠如が甚だしい。国内外の航空関係者からは、身内に甘く民間企業に厳しいと、今回改めて国交省の姿勢を疑問視する声もあった。
関連リンク
スカイマーク
・スカイマーク副操縦士、コックピットから景色撮影しTwitter投稿 国交省が厳重注意(21年1月22日)
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・国交省の飲酒機長、60日間の乗務停止 那覇で泡盛など6杯(20年5月1日)