日本航空(JAL/JL、9201)は2月4日、古着25万着の綿から製造した国産バイオジェット燃料を、羽田発福岡行きJL319便(ボーイング787-8型機、登録記号JA849J)で初めて使用した。国産バイオジェット燃料の実用化に向けた取り組みの一環で、ノウハウを蓄積するのが主な目的。海外製も含めると早ければ5-6年後にはバイオ燃料の導入規模拡大を視野に入れている。
—記事の概要—
・古着25万着
・国産燃料の課題把握
・デロリアンの次はジェット燃料
古着25万着
羽田-福岡間で必要になる燃料は片道約2万リットル。今回は古着由来バイオ燃料とケロシンを混ぜた400リットルを、羽田を出発前のJL319便に給油した。400リットルのうち、古着由来燃料は60リットルの製造を予定していたが、古着の糖化を除く過程で20-30%程度の収率悪化により、実際に製造できた量は想定を下回ったという。
今回の燃料は国産で、全国から不要になった古着約25万着を2018年10月から2019年1月にかけて回収。Green Earth Institute、日本環境設計、公益財団法人・地球環境産業技術研究機構をはじめ、国内企業複数社の協力を得て、古着の綿からバイオジェット燃料を2019年1月から2020年3月にかけて製造した。
バイオジェット燃料の国際規格「ASTM D7566 Annex 5」の適合検査には、2020年3月下旬に合格。同年6月中旬に既存のジェット燃料との混合を終え、一般のジェット燃料として、商業運航での利用が可能になった。
国産燃料の課題把握
今回のプロジェクトについて、JAL総合調達部燃料グループの上野和孝グループ長は、「燃料の使用者として、知見を蓄積するために作った」と述べ、バイオジェット燃料が今後国産化されていく中、作り方や課題を把握することが狙いで、古着由来の燃料を作り続けるわけではないという。課題となった点のひとつが、「製造するボリュームが大きくなると、品質が安定しない」ことだったという。こうした経験を、国産化に向けた取り組みに生かしていく。
現在のバイオジェット燃料の値段は、通常のジェット燃料と比べて5-6倍になってしまうといい、補助金が出るようになってきたことで、航空会社の利用が徐々に増えてきた。「米国の出資先(のバイオ燃料企業)から供給してもらえるようになれば、(助成のある)西海岸から積みたい」(上野氏)と、海外でコストメリットがある空港からバイオ燃料の給油を導入していく見込み。
デロリアンの次はジェット燃料
JALとしてバイオ燃料を作る際、古着由来のものにした理由について、ブランド・コミュニケーション企画グループの松尾知子さんは、「JALは(米映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場する)『デロリアン』を、古着のリサイクル燃料で走らせるプロジェクトを2015年にサポートし、日本環境設計とのつながりができた。デロリアンの次は古着でジェット燃料、と話が進んだ」と経緯を説明した。
航空業界では、ボーイングが2030年までに民間機のジェット燃料をすべてSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)に切り替えを目指す方針を示すなど、環境負荷軽減を目指す取り組みが進んでいる。
国内では、全日本空輸(ANA/NH)が2020年11月に、フィンランドに本社を置くNESTE(ネステ)社のSAFを、定期便に初めて使用した。SAFは従来「バイオ燃料」などと呼ばれていたもので、これまでの植物油などに加え、さまざまな原料から製造されるようになり、IATA(国際航空運送協会)が呼称を改めた。
*写真は9枚。
関連リンク
日本航空
・JAL、綿由来の国産バイオ燃料フライト 2月に787で(21年1月29日)
・JAL、「デロリアン」走行プロジェクトに協力 衣類からバイオエタノール(15年9月2日)
・ボーイング、民間機に100%持続可能燃料 2030年までに実現目指す(21年1月26日)
・ANAや東芝ら6社、排ガスから代替燃料「SAF」 ビジネスモデル検討開始(20年12月3日)
・ロールス・ロイス、100%SAFで次世代エンジン試験へ(20年11月24日)
・ANA、バイオ燃料で定期便運航開始 CO2を9割削減(20年11月6日)
【お知らせ】
タイトルを他媒体向け配信記事と揃えました。(21年2月4日 19:27 JST)