ICAO、2020年の世界旅客60％減　航空会社の潜在的損失40兆円

　国連の専門機関ICAO（国際民間航空機関）は現地時間1月15日、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の影響で、2020年の国際線と国内線を合わせた世界の総旅客数は2019年比60％減の18億人と、劇的な減少に見舞われたと発表した。ICAOによると、2003年並みの水準だという。

新型コロナウイルスの影響で世界の航空旅客は60％減＝20年4月8日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

　世界の航空会社は2020年1年間で提供座席数を51％削減し、乗客数は28億5100万人減少。世界全体で総額約3910億ドル（40兆6014億円）の潜在的な旅客収入を喪失した。財務上の損失は3700億ドルに上るとしている。

　世界全体の国際線旅客は、提供座席数が67％減少し、旅客数は14億4400万人減少。航空会社の損失規模は約2620億ドルになる可能性があるとした。

　各国の国内線旅客は、提供座席数が40％減少し、旅客数は14億700万人減少。航空会社の損失規模は約1280億ドルになる可能性があるとした。

　1月に感染拡大が始まり、3月末には航空輸送が事実上の足踏み状態に陥った。世界各地で大規模な封鎖措置や国境閉鎖、渡航制限が打ち出されたことで、4月には全体の旅客数は2019年の水準から92％も減少し、このうち国際線は98％、国内線では87％の落ち込みがみられた。

　旅客需要は4月に底を打って夏の旅行期間に復調したものの、この上昇傾向は長く続かず、9月には失速。その後は多くの地域で第二次感染の波が発生し、悪化の一途をたどった。

　2021年上期（1-6月期）の予測は、提供座席数が世界全体で40-47％減少し、旅客数は11億2900万人から13億6000万人の規模で減少すると予測。航空会社の旅客収入の損失は約1630億から1940億ドルの規模を見込む。

　また、ICAOは2020年に新型コロナが世界の航空、観光、貿易、経済に与えた影響を、IATA（国際航空運送協会）などがまとめた値を引用して言及。IATAがまとめた有償旅客の輸送距離を示すRPK（有償旅客キロ）は、世界全体で66.3％減だった。ACI（国際空港評議会）のまとめでは旅客数が約64.2％減少し、空港運営会社の収入は通常時と比べて65％または1118億ドル以上の損失が見込まれるとしている。

　世界全体の観光収入は、UNWTO（国連世界観光機関）のまとめで9100億から1兆1700億ドルの規模で減少した。世界の貿易量は、WTOがまとめた9.2％減だった。世界のGDP（国内総生産）はIMF（国際通貨基金）とWB（世界銀行）のまとめで-4.3％から-4.4％の規模で縮小し、2008-09年に起きた金融危機よりもはるかに悪化すると予測している。

　1月14日には、新型コロナウイルス感染症の発生源を調べるWHO（世界保健機関）の調査団が、武漢市へ到着。中国政府が誠意ある対応を取るかが注目される。また、米国などでは初動対応が遅れた上に隠蔽工作も疑われる中国政府に対し、昨年から集団訴訟の動きもみられる。

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ICAO

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