三重県と全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は10月31日、包括連携協定を締結した。観光振興や食材の販路拡大など従来からの取り組みに加え、政府が提唱する科学技術政策「Society 5.0(ソサエティー5.0)」の県での実現に向けた取り組みを進めていく。
両者は2015年11月に包括連携の覚書を締結。ビジネスクラスの機内食で県産食材の採用や、ANAHD傘下のANAセールスが手掛ける旅行商品「三重スペシャル」による県外から三重県への送客、おもてなしや食に関するセミナーなどを開いてきた。
現在県は「空の移動革命」や「革新的なビジネスモデル」の社会実装に向けた取り組みを、ANAHDは「空飛ぶクルマ」や「アバター」を新事業領域として手掛けており、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ロボット、ビッグデータなどを取り入れることで実現するSociety 5.0に向けた取り組みを、これまでの協定内容に加えた。
締結式の会場では、ANAHD傘下のavatarin(アバターイン)が開発した遠隔コミュニケーションアバター「newme(ニューミー)」のデモンストレーションが行われ、今後は三重県内に3カ所ある水族館に配置し、バーチャルで水族館めぐりができるようにする。また、県の空の移動革命にはANAと中日本航空によるプロジェクトが選ばれており、ドローンの活用なども進めていく。
三重県の鈴木英敬知事は、「60を超える企業と提携しているが、最高の成果を残してきた包括協定だと自負している」と、これまでの成果を強調。「北海道や九州など、飛行機を使わなければならない地域からの観光客が増えた。ANAHDのリソースを借りて、三重県の発展につなげ、全国の先頭を行く取り組みをしていきたい」と新たな連携協定を締結した抱負を語った。
ANAHDの片野坂真哉社長は、「今までの内容に加えて、未来志向の項目を加えることが出来た。三重県とは未来に向けて同じ視線を持っている」と述べ、ドローンによる災害支援や過疎地への物品輸送といった、これまで手掛けてきた取り組みを三重県でも展開していきたいという。
隣接する愛知県の中部空港(セントレア)には、ANAHD傘下のLCCであるピーチ・アビエーション(APJ/MM)が12月24日から就航。札幌(新千歳)線を1日2往復、仙台線を1往復運航する。当初はハンドリングの関係などで第1ターミナルに乗り入れるが、将来的にはLCC専用の第2ターミナルへの移転も検討する。
鈴木知事は、「エアアジアが撤退するなど、第2ターミナルが使われないのは、我々の観光需要に大きな打撃を与える恐れがあった。誘客ツールとして重要な武器をいただいた」とピーチの就航を歓迎した。知事によると、「三重スペシャル」では北海道や九州のほか、新潟や東北からの来県が増えているといい、LCC就航で新たな観光需要の掘り起こしにつなげる。
また、鈴木知事は社員をグループ外企業や自治体に出向させることを決めたANAに対し、受入を検討することを片野坂社長に伝えた。
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