日本航空(JAL/JL、9201)は10月30日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により事業構造を見直した。国際線と国内線に投入している大型機のボーイング777型機を早期退役させ、後継のエアバスA350-900型機へ置き換えることで機材費や整備費を抑え、二酸化炭素(CO2)排出量も削減する。一方、観光需要の回復が出張需要よりも早いと判断し、傘下のLCCであるZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)が運航するボーイング787型機の3-6号機の導入を決めた。
—記事の概要—
・20年度A350は8機
・ZIPAIRへ787移管
・21年3月期通期予想
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20年度A350は8機
JALの777は、9月末時点で国内線機材の777-200が9機と777-300が4機、国際線機材の777-200ERが11機、777-300ERが13機。30日の発表では、2021年3月末までに777-200ERを国際線から全機退役させ、5機を国内線に転用。その後、2023年3月末までに国内線用の777全13機を退役させる。
777-200ERは、マクドネル・ダグラス(現ボーイング)MD-11型機の後継機として、2002年に導入。中距離国際線を中心に投入し、今年7月1日に初の退役機(登録記号JA704J)が日本を離れた。
新型コロナウイルスによる需要減退で、世界の航空会社では777の早期退役が進んでいる。デルタ航空(DAL/DL)も10月で保有する18機をすべて退役させ、A350に置き換える(関連記事)。
30日に国土交通省で会見したJALの菊山英樹専務執行役員は、「A350は今年度は予定通り受領し、あと2機来て計8機になる」と語った。来年度のA350受領については、今年度内に公表予定の新たな中期経営計画の中で明らかにする。
JALは777の後継機として、エアバスA350 XWBを選定。確定発注は標準型のA350-900が18機、長胴型のA350-1000が13機の計31機で、このほかにオプション(仮発注)で25機購入する契約を結んだ。A350-900は主に国内線用777-200の、A350-1000は長距離国際線用777-300ERの後継となる。中距離国際線用の777-200ERは、同じビジネスクラス「スカイスイートIII」を搭載する787-9などで置き換え、運航コストや環境負荷の低減を図る。
JALは新型コロナの影響を受け、JALによるFSC(フルサービス航空会社)事業は、一時的な需要縮小に対応し、経年機の退役を早める。出張需要については、ビデオ会議の普及などでコロナ前の規模には回復しないと判断した。777以外では、小型機のボーイング737-800型機も61機あるうち、リース機5機を2022年度前半までにリース会社へ返却する。
9月末時点でJALの航空機は238機あるが、今年度末の2021年3月末には15機減の226機になる。
ZIPAIRへ787移管
LCC(低コスト航空会社)事業のうち、中距離国際線LCCのZIPAIRについては、ボーイング787-8型機を現在の2機に加え、JALから新たに2機の787-8を転籍させ、3号機と4号機としてリース導入する。5号機と6号機については、新中期経営計画で新造機導入かJAL機を転籍させるかを決める。
ZIPAIRの787-8は、座席数が2クラス290席。客室乗務員が機内食やドリンク類を準備するギャレー(厨房設備)を減らすなどの変更で、JAL時代より約1.5倍に増えた。今回の決定で、4号機まではJALが運航していた787-8をリース導入することが決まった。
フルフラットシートを採用したビジネスクラスにあたる「ZIP Full-Flat(ジップ・フルフラット)」が18席、エコノミークラス「Standard(スタンダード)」が272席となる。個人用モニターは両クラスとも装備していないが、機内Wi-Fiは備えており、スマートフォンやタブレットから機内食や機内販売品を注文できるほか、映画などのコンテンツ視聴も計画しており、付帯収入と顧客満足度の獲得を目指す。
ZIPAIRは当初計画で年に2機ずつ増機を予定しており、6号機まではほぼ計画通り進むことになる。冬ダイヤ期間中に予定しているホノルル就航についても、ZIPAIR側の準備はスケジュール通り進んでいる。
21年3月期通期予想
JALが30日に発表した2020年4-9月期(21年3月期第2四半期)連結決算(国際会計基準)の最終損益は1612億2600万円の赤字(前年同期は541億6300万円の黒字)。売上高にあたる「売上収益」は前年同期比74.0%減の1947億9100万円、本業のもうけを示す「EBIT(利払い・税引き前損益)」は2239億7200万円の赤字(同829億4300万円の黒字)だった。
これまで未定としていた2021年3月期通期の連結業績予想は、最終損益が2400~2700億円の赤字(前期は534億700万円の黒字)。売上収益は5300~6000億円、EBITは3300~3800億円の赤字を見込む。JALは2021年3月期から国際財務報告基準(IFRS)を適用。以前の日本会計基準を含めると、通期の最終赤字は2012年9月19日の再上場以来初めてとなる。
関連リンク
日本航空
4-9月期決算
・JAL、国際線22年度に8割回復 4-9月期は最終赤字1612億円(20年10月31日)
JALとZIPAIR動向
・ZIPAIR、787のETOPS取得 ハワイや西海岸就航可能に(20年10月26日)
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JALの777退役
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・旧JASの777初号機、”白塗り”で売却先へ レインボーセブン初の退役機(20年8月26日)
・JALの777-200ER退役機、2機目も鶴丸のまま離日 新型コロナ、売却に影響も(20年9月14日)
特集・赤坂社長に聞くJALと新型コロナ
前編「国内線回復は2021年」
後編 “二刀流社員”で反転攻勢
写真特集・JALスカイスイート777(777-200ER)
ビジネス編 個室感と隣席との会話両立
プレエコ・エコノミー編 恋人同士や家族連れも使いやすく
写真特集・ZIPAIR 787-8の機内
(1)フルフラット上級席ZIP Full-Flatは長時間も快適
(2)個人用モニターなし、タブレット置きと電源完備のレカロ製普通席
(3)LCC初のウォシュレット付きトイレ