シンガポール航空(SIA/SQ)は現地時間9月10日、全グループ従業員の約2割に当たる4300人を削減する方針を明らかにした。すでに新卒採用の凍結や早期退職などで約1900人の人員削減はめどが立ったが、シンガポール本国と海外拠点で約2400人を削減する。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、シンガポール航空の運航率は2021年3月末時点で新型コロナ前と比べて50%以下になる見通し。同社などが加盟するIATA(国際航空運送協会)は、世界の航空会社の旅客数が以前の水準に戻るのは2024年ごろを見込んでおり、問題の長期化により人員削減が必要と判断した。
今年3月末時点で、シンガポール航空グループ全体の従業員数は約2万1300人。このうちシンガポール航空本体が約1万7000人と大半を占め、LCCのスクート(TGW/TR)が約2400人、アジア域内便が中心でシンガポール航空との統合を進めているシルクエアー(SLK/MI)が約1390人、機内食など関連会社が約300人などとなっている。
今回グループ全体で削減する4300人のうち、パイロットと地上職の早期退職制度、客室乗務員の自主退職制度、3月に実施した採用凍結などで約1900人を削減。労働組合との交渉などを経て残りの約2400人を削減していく。国際線よりも回復が早いとされる国内線をシンガポール航空は持たないため、世界の大手航空会社と比べてさらに厳しい状況にあるという。
シンガポール航空のゴー・チュンポンCEO(最高経営責任者)は声明で、「献身的な従業員を手放すことは、シンガポール航空での30年間で、私がしなければならなかったもっとも難しく苦渋の決断だ。影響を受ける人々の強みや能力ではなく、航空業界を巻き込んだ前例のない世界的な危機の結果だ」と述べた。
シンガポール航空が9月に運航している日本路線は、旅客便はシンガポール-成田線が週3往復と関西線が週2往復の2路線合わせて週5往復。このほかに貨物便をシンガポール-成田間で週3往復、関西へ週4往復、中部(セントレア)と福岡へ1往復ずつの4路線合わせて週9往復運航している。
今回の発表では、機材の小型化を進める方針も示した。今後はシンガポール航空が初の商業運航を行った総2階建ての超大型機エアバスA380型機の去就も注目される。
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