ジャンボに代わり777-300ERを大型貨物機に──。航空各社が長距離国際線を中心に投入している双発の大型旅客機ボーイング777-300ER型機を貨物機に転用するプロジェクトを、GE(ゼネラル・エレクトリック)のグループ会社で航空機リースと金融を扱うGECAS(GEキャピタル・アビエーション)がIAI(イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ)と進めている。機体は777-300ERSFと呼ばれ、2022年後半から顧客にオペレーティングリースする予定で、最初のプロトタイプがこのほどイスラエルに到着した。
777-300ERは「ジャンボ」の愛称で親しまれた747のうち、1990年代から活躍した747-400の後継機。日本航空(JAL/JL、9201)や全日本空輸(ANA/NH)もジャンボの後継として777-300ERを導入し、世界各国の大手も多数運航している。
エンジンはGE製GE90-115Bが2基。旅客機の777-300ERでは床下貨物室で運べる貨物は約30トン弱だが、777-300ERSFに改修後は約100トンを世界各国へ運べるようになるという。
GECASとIAIは機体の改修契約を締結し、15機の777-300ERを貨物機に改修する契約。777-300ERSFの「SF」は「スペシャル・フレイター」の略で、これまで大型旅客機から貨物機へ改修する際の主役だった747-400から世代交代することで、エンジンが4基ある747よりも運航コストを抑えられるとしている。777の新造貨物機で777-200LRをベースとする777Fと同様、機体左側後方に貨物ドアを新設する。
「ビッグツイン(Big Twin)」の愛称が付けられた777-300ERSFの開発プロジェクトには200人以上が関わっているという。改修作業では、新しい貨物用ドアを左後部に取り付けるため胴体の主要部分を切断したり、最大9Gに耐えられる強固な壁を設置し、床をすべて強化アルミに交換するなどの作業が必要になる。
不要箇所の乗客用ドアや窓は埋め、客室を完全な貨物室に改修する計画。改修後は床下に従来からある貨物室に加え、客室だった部分にも貨物が積めるようになり、特急貨物や通販サイトの商品、生鮮品、航空機エンジンや自動車、競走馬などの超大型貨物と、さまざまな航空貨物が扱えるようになる。777-200やエアバスA330-300型機と全長を除きほぼ同じサイズで、より多くの貨物を運べる。
前方のL1-R1ドア付近には、パイロットの休憩室やラバトリー(化粧室)、ギャレー(厨房設備)、荷主などが座る席を設ける。荷主席は1列2組4席のビジネスクラスシートや、オプションでエコノミークラス席を1列目4席+2列目5席の計9席にすることも可能だという。
IAIによると、777-300ERSFは777Fより25%多くの貨物を搭載でき、747-400の貨物機と比べて1トンあたりの燃費が21%改善するという。2021年6月には開発の大きなマイルストーンに到達する見通し。
ボーイングが製造している貨物機の新造機は3機種あり、ペイロードを比べると747-8Fが30万3700ポンド(約138トン)でもっとも大きく、777Fの22万4900ポンド(約102トン)、767Fの11万5700ポンド(約52トン)。ボーイングが自社で旅客機を貨物機に改修する「BCF(ボーイング・コンバーテッド・フレーター)」も手掛けており、747-400や767-300、737-800を改修しているが、777のBCFは現時点で存在していない。一方、IAIは747-400、767-300、737-800、737-700の貨物機への改修を手掛けている。
ボーイングの航空需要予測では、今後20年間で全世界の貨物機は現在の約1870機から3260機に増え、このうち6割以上が旅客機から貨物機に改修された機体になると見込んでいる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、長距離国際線の旅客便は各国で運休が相次ぐ中、この影響で航空貨物を運ぶスペースはひっ迫しており、各社は旅客機を使った貨物専用便を運航するなど、貨物輸送に対するニーズが高まっている。
日本の航空会社が運航している貨物機は、、日本貨物航空(NCA/KZ)が747-8Fを、ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の貨物事業会社ANAカーゴ(ANA Cargo)が777Fと767F、767-300BCFを運航している。
関連リンク
Big Twin Freighter(GECAS)
777-300ERSF(IAI)
GECAS
IAI
Boeing
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