NTTデータ経営研究所とJTB、日本航空(JAL/JL、9201)は7月27日、リゾート地などで休暇の合間に働く「ワーケーション」の効果を検証したところ、仕事の生産性が20%向上したり、ストレス軽減などの効果があることがわかったと発表した。6月に沖縄でワーケーションの効果を検証する実験を実施し、働き方改革を研究する慶應義塾大学の島津明人教授が実験内容を監修した。今後は自治体や企業に対し、ワーケーションの効果検証を支援していく。
ワーケーションは「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」の造語で、リゾート地などで休暇を過ごす際、一部の時間を仕事に充てる働き方。JALは3年前の2017年夏から導入しており、鹿児島県の徳之島や米ハワイで実証実験を進めてきた。今回の実験には3社にJALグループで沖縄を拠点とする日本トランスオーシャン航空(JTA/NU)が加わり、これらの企業の従業員を中心とする男女18人が参加して、沖縄県名護市のカヌチャリゾートを宿泊先として行われた。
実験は6月19日から25日を「プレワーケーション期間」、26日から28日を「ワーケーション期間」、29日から7月3日を「ポストワーケーション期間」として、ワーケーション期間の参加者の状態や行動を把握するだけではなく、前後の期間で活動量(歩数)や睡眠時間などにどういった変化がみられたかもデータを集めた。実験を監修した島津教授のほか、健康経営アドバイザーの平井孝幸氏が実験のコーディネートを担当した。
3日間のワーケーション期間は、1日目の26日金曜日を勤務日、土日の27日と28日は休暇日とした。26日は正午から午後8時までを業務時間とし、その後は自由時間や眠る時間とした。27日は原則として自由時間だが仕事をする必要がある人は任意で業務時間を設け、最終日の28日は滞在先をチェックアウトする午前11時までは、土曜日と同じように各自の判断で過ごせるようにした。
滞在先は、宿泊する自室に加え、Wi-Fi環境とソーシャルディスタンシングを確保した執務エリアを設け、仕事はどちらでも可能。執務エリアは、マスク着用と手指の消毒を行うようにした。
実験により、仕事とプライベートの切り分けが進む結果が得られたという。ワーケーションは公私が混ざる取り組みだが、生活の中で仕事とプライベートのメリハリの付け方の好みを問う尺度「Segmentation preference(公私分離志向)」は、ワーケーション後にスコアが上昇したという。
また、ワーケーション後には参加者が所属する企業への帰属意識が高まり、仕事の生産性が20.7%上昇して効果がワーケーション終了から5日間持続し、仕事に対するストレスは37.3%低下して終了後5日間続いたとしている。
期間中は歩数が2倍程度に増える変化もみられ、新型コロナウイルスの影響により、在宅勤務が増えたことで運動量が低下したことによる糖尿病などのリスク対策にもつながるとした。
これまではワーケーションによる労働生産性や健康に与える影響などの定量的な研究が存在しなかったという。今後は今回の実験スキームを活用し、自治体や企業に対する効果検証支援を実施予定。より多くのデータを集めることで、どのような人たちが、どのような環境で、どういったアクティビティーを伴うワーケーションを実施すればより効果的なのかなど、踏み込んだ検証を考えているという。
関連リンク
NTTデータ経営研究所
JTB
日本航空
・休暇の合間に働くワーケーション、JALがハワイ実証実験 特集・MINDSの働き方改革(20年2月18日)
・ANA、帰省しながら働く「テレさとワーク」 混雑避け家族の時間づくり(19年7月31日)
・JAL、遠隔地から社内会議 iPadで参加、テレワーク推進(19年7月23日)
・JAL、徳之島で「ワーケーション」実証 目前の海で「自由な発想」(19年2月1日)