全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は7月19日、北海道旭川市でオンライン診療とオンラインでの服薬指導、処方された医薬品をドローンで患者の元に配達する国内初の実証実験を行い、報道関係者に公開した。経産省北海道経済産業局や国立旭川医科大学などと共同で、18日から2日間実施した。
—記事の概要—
・老人ホームへインスリン空輸
・レベル4は22年実現へ
老人ホームへインスリン空輸
今回の実証実験は、地方で遠距離の通院が困難な人に対し、リモートで診察から服薬までを行うためには、どのような課題があるかを探るためのもの。
実験のシナリオは、旭川医大病院から約540メートル離れた特別養護老人ホーム「緑が丘あさひ園」に、80歳代後半の慢性糖尿病患者がいると想定。同医大の医師がオンラインで患者役の男性と対面し、その日の気分や血糖値などを問診した。その診療に基づいて糖尿病の治療薬であるインスリンが必要と判断し、同院内にある薬局に電子処方せんを送った。
薬局では、薬剤師もオンラインで患者にインスリンの使用法などを指導。同時にドローンを使い、緑が丘あさひ園へ医薬品を空輸した。
ドローンは同医大を離陸後、約4分で緑が丘あさひ園に到着。インスリンの入った箱が同園の看護師に手渡された。
レベル4は22年実現へ
今回の実証実験に参加したドローン運航関係者は14人。「ドローンは操縦者の視界の範囲内での飛行」と規定する現行の航空法に従い、離陸地と着陸地に操縦者を1人づつ配置したほか、飛行経路には監視のための補助者6人も配した。
ドローン運航統括者を務めたANAHDで新規事業開発を手掛ける「デジタル・デザイン・ラボ」の信田光寿(のぶた・みつとし)さんは、「今回の飛行経路には道路があり、自動車などの通過の際には、補助員が監視してホバリングなどで回避しながら飛行した。(国の官民協議会は)2022年にはレベル4(有人地帯の目視外飛行)を目指すとされているが、こうした実証実験を繰り返すことで、ドローンの安全性を証明していきたい。そのことで(運航に携わる)人間の数も減らすことができ、事業化は可能になる」と話した。
一方、実験を見守った経産省北海道経済産業局の安藤保彦局長は「北海道では高齢の患者さんが、遠くから病院へ診察にやって来る。オンラインの遠隔診療とドローンでの医薬品配送の組み合わせが実現できれば、患者さんにとって負担が大きく軽減されると思う。こうした試みを今後も続けたい」と、ドローン医薬品配送実用化への期待を述べた。
今回の実証実験には、ANAHDと経産省、旭川医科大、緑が丘あさひ園のほか、旭川市とアインホールディングス、エアロセンス、トッパン・フォームズ、日通総合研究所が協力した。
*写真は7枚。
関連リンク
全日本空輸
・ANA、物流ドローン共同開発で提携 エアロネクストと(20年5月20日)
・ANA、羽田から離島のドローン遠隔操縦 1000キロ離れた五島列島でちらし寿司運ぶ(20年1月13日)
・ANA、五島列島でドローン配送実験 離島の利便性向上へ(19年9月10日)
・ANA、ザンビアでドローン使い血液検体輸送 エアロセンスやNCGMと(19年9月9日)
・ドローンで離島のアワビ・サザエ空輸 ANAやLINEなど、福岡でBBQ実証実験(19年8月2日)
・ANAとACSL、ドローンの海上目視外飛行検証へ 玄界島で(19年5月13日)
・成田近郊でドローン操縦認定会 合格率7%、JAL協賛(19年5月12日)
・ANA、福岡・玄界島でドローン配送の実証実験 20年以降の事業化目指す(18年11月22日)
・ANA、ドローンで被雷点検 伊丹で787使い検証(17年2月15日)