保安検査場近くの乗車場から搭乗口まで乗客に自動運転車いす(自動運転パーソナルモビリティ)で移動してもらい、乗客を送り届けた車いすが自ら出発地点に戻っていく世界初のサービスが、羽田空港第1ターミナルで7月1日から始まった。日本航空(JAL/JL、9201)と日本空港ビルデング(9706)、WHILL(横浜市)の3社が2019年11月から実証実験を進めてきたもので、体が不自由な人だけでなく誰でも利用できるサービスだ。
使用する自動運転車いすは、WHILLが開発した「自動運転システム」。ひじ掛けの先に操作用タブレットが設置され、後方には手荷物を置くスペースがある。ステレオカメラやレーザーによるセンサー「LiDAR(ライダー)」が現在位置の把握や障害物の検知などに使われ、4輪のうち前方2つはオムニホイール(全方向移動車輪)を採用することで、車輪の角度を曲げずに進行方向を変えられる。
利用できる場所は、羽田第1ターミナル南ウイングの保安検査場Bを通過後に設けられた乗車場「WHILL Station」から3-7番搭乗口。自動運転車いすに乗車後はシートベルトを着用し、向かいたい搭乗口を選択してスタートボタンを押すと走行を開始し、降車後は自動的にWHILL Stationへ無人で向かう。
JALグループ便の乗客で、車いすを利用していたり、長距離を歩くことに不安を感じている人が主な対象で、対象搭乗口は順次拡大していく。第1ターミナルは全長約800メートルで、JALによると普段は車いすを使わない人でも、羽田では空港内で車いすを使う人が一定数おり、羽田で車いすを利用する人の半数にあたるという。
空港内で車いすを使いたいというニーズが多い一方で、地上係員の負担軽減や省力化、新型コロナウイルスの感染リスク低減の観点から、車いすを自動運転のものに置き換え、人がやるべきサービスに特化する。JALは、人的サービスの強化と最新デジタル技術の活用で利便性を高める「SMART AIRPORT(スマートエアポート)」と名付けた空港のリニューアルを実施しており、自動運転車いすもこの一貫で導入した。当初は空ビルが導入した3台をJALが運用する。
昨年11月の実証実験で得た情報を基に、障害物検知の精度などを高めた。また、搭乗口近くには「動く歩道」があるが、動く歩道と動く歩道の間や階段がある場所には進入しないように設定している。
WHILLは今後、世界の旅客空港上位50空港での展開を予定しているという。すでにアブダビ国際空港、ニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港、ダラス・フォートワース国際空港、カナダのウィニペグ国際空港で実証実験を実施している。
空ビルではロボットの技術検証を目的に「Haneda Robotics Lab(ハネダ ロボティクス ラボ)」を設け、2016年からさまざまなロボットの実証実験や導入を進めている。自動運転車いすのほか、遠隔案内ロボットや消毒作業ロボットも羽田空港内に導入している。
関連リンク
日本航空
WHILL
羽田空港
Haneda Robotics Lab
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