IATA(国際航空運送協会)は、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)により大きな打撃を受けた航空・観光産業の再開にあたり、旅行者への心理的負担が大きい隔離措置をやめるよう各国政府に要請している。渡航前後や機内での対策を徹底すれば感染拡大リスクは低減できるとし、経済再開を優先するよう強く求める。
IATAの推奨策は、ウイルスの伝染リスク低減と、感染者が旅行するときのリスク低減の大きく2つの領域に分かれる。まず伝染対策では、高熱などの症状のある人への旅行中止勧告や、モバイルアプリなど電子的な方法での健康申告、感染者の多い国からの旅行者に対するPCR検査を推奨する。
感染者が旅行する際のリスク低減では、渡航中のマスク着用や消毒、ソーシャル・ディスタンシング(対人距離)の確保といった措置に加え、連絡先の追跡や目的地での感染拡大防止策などを求めている。ICAO(国際民間航空機関)の作業部会が発行したガイドラインや、WTTC(世界旅行ツーリズム協議会)の安全旅行条項のアプローチも参照すべきだとした。
IATAのアレクサンドル・ド・ジュニアック事務総長兼CEO(最高経営責任者)は、「経済を安全に再開することが優先事項だ。隔離措置は人の安全を保つのには役立つかもしれないが、多くの失業者を出す」と主張。隔離に代わる安全対策を実施することで、大きな混乱なく感染リスクを軽減できるとした。
外務省によると、日本への入国拒否の対象は6月26日時点で111カ国に上り、入国者に対する14日間の自宅やホテルでの待機要請も継続している。
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IATA
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