エアバス, ボーイング, 機体, 解説・コラム — 2020年6月18日 21:10 JST

紫外線照射トイレも研究 エアバス・ボーイングが考える新型コロナ対策

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 都道府県をまたぐ移動の自粛が、6月19日から全国で緩和される。これに伴い、ピーチ・アビエーション(APJ/MM)が国内線全路線の運航を再開するなど、航空各社はこれまでの大量運休・減便が続いていた状態を順次緩和し、日本航空(JAL/JL、9201)は28日以降は減便率が40%台となり、全日本空輸(ANA/NH)も7月は51%と、これまで約7割の国内線が運休・減便となっていた大手2社も復便が進む。

 一方で、窓が開かない旅客機に対して、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対策に不安を感じている利用者もいるだろう。こうした不安に応えるべく、航空各社は客室内の空気が2-3分ですべて入れ替わることなどを盛んにアピールしているが、機体を製造するメーカー側はどのように捉えているのだろうか。欧州のエアバスと米国のボーイングに聞いた。

ボーイングが研究している紫外線照射による化粧室の洗浄システム(同社資料から)

—記事の概要—
3分で入れ替わる空気
紫外線やコーティング研究

3分で入れ替わる空気

 近年日本の航空会社でも導入が進んでいるエアバスは、すべての現行機にHEPA(高効率粒子状空気)フィルターを標準装備。客室の空気は主に左右の主翼下にあるエンジンから取り込み、天井裏のエアコンダクトから流れ、左右の壁の下部から床下へ流れて機外へ排出される。一部は客室を循環するが、その時に手術室の空調設備にも使われているHEPAフィルターで空気内の微粒子や細菌、ウイルスなどを取り除いている。

機内の空気の流れ(エアバスの資料から)

ANAの777-300の貨物室奥に取り付けられているHEPAフィルター=20年5月26日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 HEPAフィルターは、JIS規格で性能が規定されていて、0.3ミクロン以上の粒子を99.97%捕集できる。エアバスによると、マイナス50度に達する高高度の大気にウイルスや細菌は存在しないという。

 エアバス・ジャパンのステファン・ジヌー社長は「手洗いとマスク着用、搭乗前の検温ができれば心配ない。乗客自身がこまめに除菌するのが大事だ」と話す。新型コロナ対策は「業界全体で解決すべき問題で、安全に競争はない。ボーイングのエンジニアリング部門とも定期的に意見交換している」(ジヌー社長)として、エアバスではオーバーヘッドビン(手荷物収納棚)を抗菌仕様にしたり、機内清掃を85度以上の高温で洗浄する、フライト後や運航終了後に地上車両から洗浄用の空気を客室に送り込んで滅菌するなどのアイデアを検討しているという。

 また、通常はタキシング(地上走行)時から機内換気を始めるが、乗客が搭乗する前から開始すれば、機内の空気は乗客が搭乗時によりクリーンになるとして、現在のシステムを活用した対策もあるとしている。乗客が降りる際、一気に立ち上がると通路で接触が生じるので、前方席から徐々に降りてもらうのが理想だとしている。

紫外線やコーティング研究

 ボーイングの機体もHEPAフィルターを採用しており、同じく2-3分で客室内の空気は入れ替わる。ボーイングでは紫外線照射を衛生対策として以前から研究しており、乗客がラバトリー(化粧室)を使用後に紫外線を手に照射するシステムが開発段階だという。紫外線を活用したシステムの導入には数年かかる見通しだ。

保安検査場前に設置されたサーモグラフィー用カメラと消毒液。乗客自身も対策を講じることが不可欠だ=20年6月15日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 次世代の抗微生物コーティングの開発も進めており、微生物を捕らえて死滅させる繊維状のコーティングも新型コロナウイルス対策の一つとしている。現在は補完手段として、抗菌スプレーなどを考えているという。

 機内の消毒や清掃についても、新型コロナウイルスに対してあまり効果がない方法も航空会社に情報提供しており、より効果が期待できる対策を共有しているという。ボーイング民間航空機部門プロダクト・ディペロプメント担当ディレクターのジム・ハース氏は、「コックピットでどこを重点的に消毒すべきかなどを示している」と、情報共有の例を挙げた。

 世界の二大航空機メーカーは、客室内の空気の清潔さについて共通した見解を示していた。また、IATA(国際航空運送協会)は主要航空会社18社を対象に実施した非公式調査で、乗客同士の機内感染が確認されなかったことから、搭乗前の検温や手指のこまめな消毒、空港や機内でのマスク着用を徹底すれば、航空機が感染源になる可能性は低いとしている。日本の航空会社でも、従来の機内清掃に消毒作業を加え、希望する乗客に除菌シートを配る会社もでてきた。

 窓が開かないことから密閉空間と思われがちな飛行機だが、乗客自身も対策を講じれば利用に問題はないと言えるのではないだろうか。

関連リンク
Airbus
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ボーイング・ジャパン

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