全日本空輸(ANA/NH)をはじめとするANAグループは5月21日、新型コロナウイルスなど感染症の感染拡大を防ぐ4つの「基本的な考え方」を発表した。同時に、乗客にはマスク着用や手と指の消毒、利用者間の感覚を保つソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の保持)への協力を求めている。マスク未着用や発熱など体調不良と判断された場合、搭乗を断る場合もあるとしている。
—記事の概要—
・4つの基本的な考え方
・マスク着用必須
4つの基本的な考え方
基本的な考え方は、空港や機内などの衛生管理や社員のマスク常時着用、機材の消毒、機内の換気で構成。1つ目の衛生管理は、空港や機内、ラウンジなどを、清掃や消毒などにより清潔な環境を用意する。2つ目のマスクは、社員が利用者と接する場所で常に着用する。これに加え、空港の地上係員はフェイスシールドを、客室乗務員は手袋をマスクとともにすでに着用している。3つ目は航空機の消毒で、国際線機材は毎便、国内線は毎晩消毒を実施する。
4つ目の機内換気は、上空では約3分で空気がすべて入れ替わることや、「HEPA(高効率粒子状空気)フィルター」により0.3ミクロンの粒子を捉えて空気中の99.97%以上の不純物などをろ過し、空気が客室内に滞留せず常に天井から床下へ流れていることを説明している。
マスク着用必須
乗客に対しては、マスクを必ず着用するよう求めている。幼児や着用が難しい人を除き、マスクを着用していない場合は搭乗を拒否する場合がある。また、保安検査場で検温を羽田と成田、伊丹、関西、中部、福岡の6空港で実施しており、発熱や体調不良とみられる場合も、搭乗を拒否する可能性がある。航空券を手配する際、ANAのウェブサイトにメールアドレスを登録している人には、検温による体調管理やマスク着用などを呼びかける案内を送る。
ANAでは、空港のチェックインカウンターにビニールカーテンを設置し、ラウンジで軽食やドリンク類の提供を一部制限している。今回の発表により、空港の入口や自動チェックイン機付近、自動手荷物預け機付近、保安検査場、搭乗口に消毒液を設置。機内では、希望者に除菌シートなどを提供する。
また、座席指定時にANAでは中央席を一律ブロックしていないものの、ほかの乗客の座席指定状況を確認しながら空席を選択するよう求めている。日本航空(JAL/JL、9201)などでは、乗客の心理的不安を和らげるため、航空会社側が窓側と通路側のみ販売し、中央席を予約できない措置を当面の間講じている。
ANAやJALなどが加盟する国際的な航空業界団体「IATA(国際航空運送協会)」などは、各国政府に対して科学的根拠に基づいた感染防止策をとるよう求めている。IATAもこれまでの事例を検証した結果として、機内でのマスク着用を推奨している。
関連リンク
全日本空輸
機内の空気循環について
ANA
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IATAなど国際機関
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