独ルフトハンザ・グループのルフトハンザ・テクニークは、総2階建ての超大型旅客機エアバスA380型機を貨物機に一時転用するための客室改修に関する契約を初締結した。契約先は非公表。中国から拡散した新型コロナウイルスの影響で、マスクや医療品の輸送需要が増えているほか、旅客定期便の長期運休により旅客機を貨物専用機に一時転用する航空会社が増加。A380も多くの航空会社で運休を余儀なくされており、有効活用策として売り込む。
A380はエンジンが4基ある超大型機で、メーカー標準座席数で4クラス400-550席、1クラスならば最大853席もの座席を設けられる総2階建ての客室が特徴。ルフトハンザ・テクニークによると、客室と貨物室では航空当局による安全性の承認基準がまったく異なり、座席を取り外すだけでは床下の貨物室と同じようには客室へ貨物を積めないという。例えば床の耐荷重が貨物機と旅客機では異なり、防火策を講じる必要がある。
ルフトハンザ・テクニークは、すでに中型旅客機A330-300の改修について独連邦航空局(LBA)から承認を取得済み。今回A380については、技術・エンジニアリングサポートに関する契約を結んだとしており、現時点で詳細は明らかにしていない。また、A380は過去に貨物型のA380-800Fの開発が検討されたものの、実現には至らなかった。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がまん延して以降、旅客機を改修して一時的に貨物機として活用する改修は航空会社の注目を集めている。同社には40社以上から問い合わせがあり、すでにさまざまな機種を対象にした15以上のプロジェクトが進んでいるという。航空当局が改修後の機体の安全性などを証明するSTC(Supplemental Type Certificate、追加型式設計承認)を、一般的なすべての機種で取得できるようにしていく。
同社以外では、カナダのアビアノア(Avianor)がエア・カナダ(ACA/AC)のボーイング777-300ER型機の客室を改修して貨物積載ゾーンを設置する改修を実施。エアバスもA330とA350向けに客室の一部を貨物スペースに転用できるシステムを開発している。
エアバスのシステムでは、防火や飛行中に貨物が移動するのを防ぐため9Gまでの荷重抑制機能があり、貨物専用機としての運航を終えた際、元の座席を素早く設置して旅客機に戻せるようになっている。このため、ルフトハンザ・テクニークが手掛けるA380の改修も貨物ドアを新設する大掛かりなものではなく、客室から座席を撤去して貨物の搭載スペースを確保するレベルの改修になるとみられる。
関連リンク
Lufthansa Technik
Airbus
旅客機を貨物機に改修
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貨物輸送強化を図る航空各社
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・デルタ航空、A350で貨物専用便 マスクなど医療品、中国から米国へ毎日(20年4月18日)
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【お知らせ】
タイトルをYahoo!ニュース配信記事と統一しました。(20年5月16日 00:10 JST)