全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は4月28日、2021年度の新卒採用人数を抑制する可能性を示した。中国から拡散した新型コロナウイルスの影響により国際線が9割、国内線も5-6割が運休する中、現在働く社員の雇用を維持することを優先する。一方、一時帰休の範囲はグループ35社4万2000人に拡大する。
ANAは、1日から客室乗務員の8割に当たる約6400人の一時帰休が始まり、緊急事態宣言発令から一夜明けた8日からは間接部門3000人も対象に加わった。28日にオンラインで決算発表したANAHDの福澤一郎常務執行役員は、社員の一時帰休について「4月末でグループ22社3万5000人だが、5月末くらいまでに35社4万2000人に拡大する」と語った。
ANAHD傘下のグループ社員は約4万5000人。今回の拡大で、大半が一時帰休対象になる。役員報酬の減額も始めており、管理職の賃金削減などの人件費抑制も検討していく。
新卒採用については、「抑制していかざるを得ない」(福澤氏)と述べ、採用数を抑える可能性を示唆。2020年度の新入社員は、38社3686人だった。
ANAHDが28日に発表した2020年3月期通期連結決算は、純利益が前期(19年3月期)比75.0%減の276億5500万円。売上高は4.1%減の1兆9742億1600万円、営業利益が63.2%減の608億600万円、経常利益が62.1%減の593億5800万円と大幅な減収減益だった。
2020年1-3月期(第4四半期)に限ると、売上高は前年同期比20.0%減の3920億5000万円、営業損益は588億5000万円の赤字、経常損益は631億7700万円の赤字、純損益は587億9100万円の赤字で、大幅な減収減益。四半期の営業益と経常益、最終益が赤字に転落するのは2018年1-3月期以来で、同期では過去最悪の数字となった。
福澤氏は資金繰りについては「問題ない」と述べ、今年度末(21年3月末)時点の旅客数は前年度と比べて「5割から7割程度の回復にとどまるのでは」との見通しを示した。
関連リンク
全日本空輸
20年3月期決算詳報
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ANAHDの決算
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・ANA、19年4-9月期の純利益23%減 通期見通しは下方修正(19年10月30日)
・ANA、19年4-6月期営業益19.4%減 採用や整備費用かさむ(19年7月30日)
・ANAの19年3月期、売上高2兆円突破 営業益0.3%増(19年4月27日)