全日本空輸(ANA/NH)は4月22日、旅客機の客席に貨物搭載を始めた。マスクや防護服などの医療品を中国から日本へ運ぶ際、1便当たりの搭載量を増やす取り組みの一つで、床下の貨物室のみで運ぶ場合に比べて、客室にも搭載すると最大約1.4倍の貨物を運べる。客席に貨物を積むのは日本の航空会社では初の取り組みで、初日の22日は上海(浦東)発羽田行きNH968便(ボーイング787-9型機、登録記号JA894A)の客席に183個の段ボールが積まれ、貨物室の貨物約16トンとともに運ばれた。
ANAでは、3月から成田空港と中国本土や香港、台湾を結ぶ貨物臨時便を設定し、貨物定期便も復便や増便、大型化を実施。3月は86便の貨物便を運航し、4月は297便を予定している。4月10日には、旅客機に乗客を乗せない貨物専用便となる上海発羽田行きNH968便には、乗客が手荷物をしまう客席上のオーバーヘッドビン(手荷物収納棚)に、マスクなどが入った段ボールの搭載した。今回国土交通省航空局(JCAB)から客席への貨物搭載も認可されたことで、オーバーヘッドビンと客席どちらにも貨物が積めるようになった。
今回は貨物室のほか、エコノミークラスの客席に段ボールを積み、シートベルトで固定。オーバーヘッドビンへの搭載はなかった。使用した787-9は3クラス215席の国際線仕様機で、最大で貨物室に16トン、オーバーヘッドビンに2トン、客席に4トンの合わせて22トンの貨物を運べる。オーバーヘッドビンと客席の両方を活用した場合、貨物室だけで運ぶ場合に比べて最大約1.4倍積めるようになった。
世界的に旅客便が大幅に運休する中、国際航空貨物は医療関連物資の輸送ニーズが高まり、搭載スペースが不足している。ANAでは今後も貨物需要の動向を踏まえながら、客室を併用する対象路線の拡大を検討していく。
貨物専用便によるマスク輸送
・上海からマスク1200箱が成田到着 JAL、旅客機で貨物専用便(20年4月18日)
・787機内にマスク入り段ボールも 国際線9割運休のANAとJAL、貨物輸送を強化(20年4月15日)
各社の貨物輸送
・デルタ航空、A350で貨物専用便 マスクなど医療品、中国から米国へ毎日(20年4月18日)
・エア・カナダ、777-300ERを貨物機に 座席外し搭載量2倍、マスク900万個運ぶ(20年4月16日)
緊急事態宣言後の羽田
・【空撮】緊急事態宣言後の羽田空港、ANAとJAL大型機並ぶ 4月入り予約減(20年4月8日)