羽田空港では4月17日から、国内線保安検査場入口で乗客の体温をサーモグラフィーで確認するようになった。体温が37.5度以上の利用者には搭乗自粛を要請するものだが、こうした応対時に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染を防ぐことが、利用者にとっても航空会社の社員にとっても重要だ。特に、国際線では外国人のマスク着用に対する考え方が日本人と異なるなど、利用者と接する社員の安全管理が不可欠だ。
ANAホールディングス(ANAHD、9202)傘下の全日本空輸(ANA/NH)では、羽田空港で働く地上係員(グランドスタッフ)の佐伯麻帆さんが、感染予防用フェイスシールドの導入を提案。カウンター業務などを担当しない時間帯に、地上係員が交代で自作している。羽田の地上係員などが所属するANAエアポートサービスの旅客サービス部国際業務課の髙橋枝里香さんに話を聞いた。
フェイスシールド導入のきっかけは、感染拡大が続く中でコンビニエンスストアのレジなどにビニールカーテンが設置されたことだったという。羽田での検温がスタートすることや、国際線の搭乗口では、マスクを外した乗客のパスポートを至近距離で確認するなど、地上係員や応対する社員が感染する可能性が高まっていたからだ。
入社3年目の佐伯さんがフェイスシールドについて調べたところ、入手のしやすさや価格で市販のカードケースを加工する方法にたどり着き、身近にあるもので製作することになった。すでに作り方のマニュアルが完成しており、地上係員が携行するiPadには配布済みで、成田空港と関西空港の係員にも共有。海外支店からも要望があり、ミャンマーに完成品を10個送った。
13日に型紙が完成して作り始め、すでに700個が完成。今週中には1000個に達する。「いま働いている係員の分は間に合います」と髙橋さんは話す。着用しているのは、国際線の搭乗口を担当する係員と、国内線の保安検査場前で発熱が確認された利用者に接する係員などだ。
フェイスシールドの作り方は、まずA4用紙ほどのカードケースを型紙に合わせて切り取り線を引き、ハサミでくりぬく。これでフェイスシールド2個分ができる。次に額に当たる部分に市販の隙間テープを貼り、パンチでひもを通す穴を開ける。最後にストッパー付きのひもを通して完成だ。3人の地上係員が1組となり、3つの工程を1人ずつ手分けして作業することが多いという。シールドの底部はヤスリ掛けをしない代わりに、けがをしないよう水色のマスキングテープを保護用に貼っている。
現在ANAの地上係員はマスクを着用して応対しているが、自らの感染防止を防ぐだけではなく、利用者への安心感にもつなげたいという。
*写真は12枚。
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