北海道エアシステム(HAC、NTH/JL)は4月12日、22年ぶりとなる新機材ATR製ATR42-600型機の初号機(登録記号JA11HC)を就航させた。初便の釧路行きJL2863便は、乗客35人を乗せて札幌の丘珠空港を午前10時55分に出発した。HACにとって1998年3月28日の運航開始以来、初めての機材更新だったが、中国から拡散した新型コロナウイルスの影響で就航式典は中止になった。
北海道の大自然イメージ
HACは丘珠を拠点とする日本航空(JAL/JL、9201)のグループ会社。ターボプロップ機のATR42は、1998年の就航当初から使用してきたサーブ340B型機(1クラス36席)の後継機で、これまでと同数の3機を導入して置き換えを計画しており、座席数は1クラス48席と12席増えた。エンジンはプラット・アンド・ホイットニー・カナダ製PW127Mを2基搭載し、コックピットはエアバスA380型機の技術を取り入れたグラスコックピットになっている。
初号機には、北海道の大自然をイメージした特別塗装を施した。機体の左右で異なるデザインを採用し、左側は6カ所の就航地を雪の結晶で表現。右側には北海道の特産品であるサケや利尻昆布、ホタテ、キタムラサキウニを描いた。北海道根室出身のデザイナーで、ライトパブリシティ(中央区銀座)の鈴木奈々瀬さんがデザインしたもので、機体後方左側の乗降用ドア付近には、赤いキタキツネが描かれた。
近年、航空会社では世界的な傾向として、ブランド統一を掲げてグループ会社の特色が利用者に伝わらない塗装が増えているが、HACでは北海道を拠点とする航空会社であることを機体を通じて打ち出そうと、今回のデザインを取り入れた。初便の乗客には、初号機のデザインをモチーフにした豆絞り手ぬぐいなどの記念品を、搭乗証明書とともに手渡した。
初号機は、2019年12月18日に仏トゥールーズで受領。同日午後0時45分にトゥールーズを出発し、ギリシャのイラクリオン国際空港と、エジプトのフルガダ国際空港、オマーンのマスカット国際空港、インドのナグプール国際空港、タイのバンコク・ドンムアン国際空港、台湾の台北・松山空港を経由して、同月22日午後6時45分に鹿児島へ到着した。鹿児島でパイロットの訓練などが行われた後、丘珠には今年2月16日に到着し、就航前の訓練を進めてきた。
2号機以降の受領、新型コロナで後ろ倒しも
HACの大堀哲社長は、「正直ホッとした。新型コロナウイルスの影響が出ているが、じっと耐え、反転攻勢に出てからは北海道経済に寄与していきたい」と語った。HACの利用者層がビジネス客が多いが、座席数増加に伴い、観光需要の掘り起こしも課題だ。ATR42を使ったチャーター便や新路線の可能性について、大堀社長は「小回りが利く会社なので、いろいろな可能性を追求していきたい」と述べた。
今後の運航スケジュールは、札幌(丘珠)-函館線に1日2往復、釧路線に1日1往復投入する。両路線へ就航後は、休日などに三沢線と利尻線にも投入する見込みで、利尻線は19日、三沢線は29日に初便を予定している。
ATRはエアバスと伊アレニア・アエルマッキの共同事業体として、1981年に設立されたリージョナル機メーカーで、ターボプロップ機を手掛けている。HACの2号機(JA12HC)は9月に受領し、10月の就航を予定しているが、ATRの最終組立工場がある仏トゥールーズも、新型コロナウイルスの影響で工場の稼働が低下しており、今後の状況により就航が遅れる可能性がある。当初は2021年春の導入予定だった最後の3号機(JA13HC)も「当初の計画が変わってくると思う」(大堀社長)と、機材更新を終える時期を見直す可能性を示唆した。
HACは機体の整備をJALグループで鹿児島空港を拠点とする日本エアコミューター(JAC/JC)に委託しており、サーブに続いてATR42もJACが整備する。JACもATR42を導入しており、座席数や基本的な機内仕様は同じになったが、JACが特注したストレッチャー設置機能は装備していない。
関連リンク
北海道エアシステム
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丘珠到着と機内の動画(YouTube Aviation Wireチャンネル)
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・HAC ATR42-600初号機 札幌・丘珠空港へ到着
写真特集・HAC ATR42-600初号機丘珠到着
前編 22年ぶり新機材
後編 サケや利尻昆布で北海道を表現
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