全日本空輸(ANA/NH)などを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の片野坂真哉社長は4月1日、ANAグループに入社した38社3686人の新入社員に対し、安全が何よりも優先されることなどをビデオメッセージで伝えた。中国から拡散した新型コロナウイルスの影響で、羽田空港の格納庫で例年開催しているグループ合同入社式は中止。新入社員はオフィスや自宅でビデオメッセージを視聴した。
片野坂社長は2015年の就任以来、1971年の雫石事故など入社式で過去の航空事故に触れ、新入社員に安全の重要性を説いてきた。「ANAグループでは私を含め、お客様が犠牲となる航空機事故を経験した役員、社員はほとんど残っていない。人間は何事も経験を積むことが大事だと言われるが、航空機の事故だけは経験をしないで、事故の悲惨さや安全の重要性を、現在の社員や後輩となる社員に伝えていかなければならない」と語った。
また、安全はパイロットや客室乗務員といった乗務員だけの問題ではなく、整備や空港での旅客対応、グランドハンドリング(地上支援)、運航の現場から離れても利用者の個人情報を預かることなどにも及ぶとして、全グループの社員に関係があることだと訴えた。片野坂社長は「飲酒の法令違反が、安全上の重大な問題であるという認識や法令順守の意識が、いまだに会社の中で徹底されていない」と指摘し、全社で信頼回復に取り組む課題であると述べた。
大幅な利用者減となった新型コロナウイルスについては、「必ず克服できる。2001年の世界同時多発テロなど多くの危機に見舞われたが、全役職員が結集し、知恵を絞り乗り越えてきた。我々の目の前にある危機を乗り越える一員として、皆さんが仲間入りする」と語りかけた。
グループで近年重視している非航空系分野も含む新たなテクノロジーの導入については、「より良いサービスを提供すると同時に労働力不足を補い、より働きやすい環境の構築を図る」と意義に触れた。
3月29日に始まった夏ダイヤでは、ANAは羽田からミラノやストックホルム、イスタンブールなどへの新路線を開設予定だったが延期となり、新たな就航時期が見通せていない。片野坂社長は「必ず就航の時がやってくる」と述べ、開催延期が決まった東京オリンピック・パラリンピック同様、準備を万全とするよう求めた。
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