エアライン, 企業, 空港 — 2020年2月20日 23:20 JST

JAL、羽田国内線に自動手荷物預け機 待ち時間短縮

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 日本航空(JAL/JL、9201)は2月20日、羽田空港国内線第1ターミナルで自動手荷物預け機(SBD=Self Baggage Drop)と、新型自動チェックイン機を報道関係者に公開した。待ち時間を短縮し、人的サービスの強化と最新技術の活用で利便性を高める「SMART AIRPORT(スマートエアポート)」と同社が呼ぶ取り組みの一つで、3月17日からサービス開始を予定している。現在は最繁忙期で30分並ぶこともある手荷物の預け入れを5分以内に短縮を目指し、ストレスフリーな旅を提供して差別化を図る。

羽田空港の自動手荷物預け機にスーツケースを置くJALの女性社員(右)と地上係員=20年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

—記事の概要—
待ち時間30分を5分に
省力化でサービス向上
分散処理で時間短縮

待ち時間30分を5分に

 JALは今回、手荷物に付けるタグを発行できる新型チェックイン機12台と、6台のSBDを第1ターミナル2階南ウイングの出発ロビーに導入。SBDをJALが国内線に導入するのは初めてで、チェックインカウンターのリニューアルが完了する今夏には、新型チェックイン機が82台と、SBDが38台の体制になる。今冬に新千歳空港、2021年春には伊丹と福岡、那覇の3空港へ導入を予定しており、幹線が就航する主要5空港すべてに展開する。

羽田空港で新型自動チェックイン機と自動手荷物預け機が並ぶエリアを紹介するJALの地上係員=20年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 羽田でJALの国内線利用者が手荷物をセルフサービスで預ける場合、現在は手荷物タグを発行する機械と、自動チェックイン機が別々に分かれているが、1台に統合。搭乗券を新型チェックイン機にかざして搭乗手続きを済ませるとタグが発行され、乗客が自分で手荷物にタグを付けてSBDに預ける。

 従来はタグを付けた手荷物をカウンターの地上係員に預けていたが、SBDの導入で乗客が自ら預けられるようにした。セルフサービスによる預け入れに加え、チェックインカウンターで地上係員が手荷物を預かってタグを発行するケースもあり、JALによると最繁忙期は手荷物を預けるまでに30分、保安検査場を通過するまでにさらに30分以上掛かるケースもあり、待ち時間短縮が課題となっていた。

 スマートエアポートの取り組みとして、カウンターのレイアウトを見直して乗客が手続きする動線をわかりやすくし、新型チェックイン機とSBD、保安検査場にフラッパー付き自動ゲートを導入することで、待ち時間を最小限に抑える。今後は搭乗口に新型の搭乗改札機を導入予定で、乗客の通過時間短縮とセキュリティー向上を目指す。

 出発ロビーの改修は昨年8月ごろからスタートし、羽田の総工費は30億円前後になる見通し。SBDは2月5日から午前と午後の一部時間帯で試験運用を始めており、課題の洗い出しや、SBDが手荷物の形状などを判別するAI(人工知能)の情報蓄積などを、3月の本稼働を目指して進めている。北ウイングの出発ロビーも、3月末ごろから一部の運用開始を見込む。

羽田空港の新型自動チェックイン機で搭乗手続きをするJALの女性社員=20年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港の自動手荷物預け機に搭乗券をかざすJALの女性社員(右)と地上係員=20年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港で自動手荷物預け機が発行すする手荷物引換証を手にするJALの地上係員=20年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

省力化でサービス向上

 JALの屋敷和子東京空港支店長は、「無人化することはなく、係員が利用者に寄り添った、システムではできないサービスに集中できるようにする」と述べ、人がやるべきサービスと機械に適した仕事を分離し、顧客満足度を高めていくことが狙いだという。SBDが設置されたエリアの壁には、折り紙をモチーフにした装飾が施され、和をイメージさせる空間に刷新した。

JALの自動手荷物預け機が並ぶ羽田空港第1ターミナル南ウイングの出発ロビー=20年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

手荷物タグを発行するJALの新型自動チェックイン機=20年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 今回導入する機器のうち、SBDは物流システムを手掛けるダイフク(6383)と共同開発。2014年にダイフクが買収したニュージーランドのBCS社が手掛けるもので、1台で左右両側から手荷物を預けられ、ベルトに置かれた手荷物の個数や形状を3D(三次元)カメラで判別し、2D(二次元)カメラでタグを読み取る。人感知センサーを備え、温度や形状から子供などが誤って侵入しない構造になっている。

 SBDは、今後導入を計画しているRFID(無線自動識別)タグを活用した手荷物の預け入れも視野に入れた構造になっている。外観デザインはJALの女性社員の声も取り入れ、傷が付きにくい人工大理石を外観に採用するなど、現場のニーズを反映した。

 SBDの裏にある搬送ベルトもダイフク製に一新。トレイに入れて搬送することで、「おみやげの紙袋も預かれるようにした」(屋敷支店長)といい、南側出発ロビーと北側の搬送ベルトのうち、片方に不具合が起きても支障がない構造になっているという。

 新型自動チェックイン機は、三菱電機インフォメーションシステムズと沖電気(6703)が共同開発パートナー。JALは2015年3月にセルフサービスで乗客が手荷物タグを発行して取り付ける「JALエクスプレス・タグサービス」を開始したが、タグ発行機とチェックイン機が分かれていたので、2台を統合した。タグは手荷物の持ち手に通して貼るだけの「ライナーレスタグ」を採用し、貼り付けを簡素化した。

 現在保安検査場Bに設置済みの自動ゲートは、日本信号(6741)と共同開発。従来は保安検査を受ける直前に搭乗券を確認していたが、保安検査場に入場する時点でチェックすることで、通過時間の短縮や保安検査係員の負担軽減につなげる。


羽田空港に設置されたJALの自動手荷物預け機=20年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港に設置されたJALの新型自動チェックイン機=20年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田空港に設置されたJALの保安検査場自動ゲート=20年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

分散処理で時間短縮

 国内線の搭乗手続きでは、全日本空輸(ANA/NH)も2015年7月1日に自動手荷物預け機「ANA Baggage Drop サービス(ABD)」を導入済み。ABDは手荷物タグの発行と預け入れを同じ機械で済ますことができ、2台に分散させたJALとは異なるアプローチだ。

羽田空港に設置されたJALの手荷物タグを発行できる新型自動チェックイン機(手前)と自動手荷物預け機=20年2月20日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 JALによると、タグ発行と預け入れを分散することで、搭乗手続きを終えるまでの時間を全体的に短縮できるという。

 JALのスマートエアポートは、ITを活用した人的サービスと、最新技術によるセルフサービスによる、JALが考える新しい空港サービスの形。5つのコンセプトとして、スムーズに移動できること、落ち着いて手続きできること、手続き方法の選択肢が豊富であること、ニーズに合わせたサポートがあること、旅全体へサポートがあることを掲げている。

 スマートエアポートを担当するJAL空港企画部の槇裕作主任は、「係員の負担が軽減され、利用者にサービスしたいという係員の気持ちを実現し、意欲向上にもつながる」と導入のメリットを説明した。

関連リンク
日本航空
ダイフク
BCS
三菱電機インフォメーションシステムズ
OKI
日本信号

自動手荷物預け機の動画(YouTube Aviation Wireチャンネル
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