国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧MRJ)」を開発する三菱航空機のアレックス・ベラミーCDO(最高開発責任者)は現地時間2月11日、機体の安全性を国が証明する「型式証明(TC)」取得を目指すM90(旧MRJ90)の客室について、設計を刷新した新型機M100と将来的に同一仕様を選択できるようにする考えを示した。
スペースジェットは、従来「MRJ90」と呼んでいた90席クラスの機体「SpaceJet M90」と、M90をベースに新設計する70席クラスの「SpaceJet M100」の2機種で構成。これまで将来像として描いていた100席クラスのMRJ100Xは「SpaceJet M200」として検討を進めている。
M100は新しいオーバーヘッドビン(手荷物収納棚)を採用し、貨物室を短くする。このうち、オーバーヘッドビンは客室の使い勝手や印象を左右するため、M90の顧客の中でもM100と同等の客室を求める声が聞かれる。一方で、M90はTC取得に向けてさまざまな作業がすでに進んでおり、従来の客室仕様のままTC取得を目指す。
ベラミー氏は、「新しい客室は好評だ。M90も将来的に検討していきたい」と述べ、M90でもM100と同じ客室仕様を選択できるようにしていく考えを示した。
M100は、現時点では親会社の三菱重工業(7011)を交えて事業化に向けた検討を進めている段階。M90のTC取得に向けた飛行試験と並行して、ローンチに向けた準備を進める。M100の市場投入は2023年を計画しているが、M90の納期が6度目の延期により2021年度以降となったことから、M100も遅れる見通し。
三菱航空機は、11日に開幕したシンガポール航空ショーに出展。同ショーは偶数年開催で、前回2018年は商談スペースのパネル展示やPRビデオ放映にとどまったが、今回は昨年のパリ航空ショーでお披露したM100の客室モックアップを展示している。オーバーヘッドビンは新形状で、IATA(国際航空運送協会)推奨の機内持ち込み可能な最大サイズのバッグを収納できる。
*写真は5枚。
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三菱航空機
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