全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)は1月30日、中国路線の中国発旅客数が、2月の予約状況で昨年の約半分に落ち込んでいることを明らかにした。新型コロナウイルスの感染拡大により欠航している成田-武漢線を除いたもので、同時期に日本から中国へ向かう旅客数は4割減になっているという。例年は旧正月(春節)で訪日需要が好調だったが、感染拡大の影響が出始めた。
現在ANAは中国10都市11空港(上海が2空港)へ就航し、1日24往復48便を運航。ANAHDの福澤一郎グループ経理・財務室長兼財務企画・IR部長は30日、都内で開いた2019年4-12月期(20年3月期第3四半期)決算会見で、「中国線は国際線の売上全体で1割強。ひとつの地域に偏らないポートフォリオにしており、欧米が5割、東南アジアが3割、ホノルルが1割で、武漢線は1%以下だ」と、国際線全体の売上に占める中国路線や武漢線の割合を説明した。
17年前の2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した際は、ANAも中国路線の休止や減便があった。福澤氏は「状況により、考えないといけない」と述べ、今後の状況により中国路線の欠航や減便が生じる可能性を示唆した。
また、ANAは政府による羽田-武漢間のチャーター便を運航。同社のパイロットと客室乗務員が乗務したが、ANAHDによるとパイロットは乗務翌日から3日間疲労軽減のため休暇を取らせており、客室乗務員は今日から2週間は乗務予定を入れていないという。
同日発表した2019年4-12月期連結決算は、売上高が前年同期比0.9%増の1兆5821億6600万円、本業のもうけを示す営業利益が23.6%減の1196億5600万円、経常利益が20.5%減の1225億3500万円、純利益が19.1%減の864億4600万円と、大幅な減益となった。生産規模拡大に伴い、空港使用料や機材費、人件費など航空事業の営業費用が3.9%増の1兆2831億円となったことが影響した。
2020年3月期通期の連結業績見通しは、前回2019年10月29日発表から据え置いた。売上高は2兆900億円(19年3月期比1.5%増)、営業利益は1400億円(15.2%減)、経常利益は1370億円(12.6%減)、純利益は940億円(15.1%減)を見込む。福澤氏は、新型コロナウイルスの影響が「精査できていない」と、見直しに至らなかった理由を語った。
関連リンク
全日本空輸
・ANA、成田-武漢線の欠航継続 3月1日まで(20年1月30日)
・武漢チャーター、2便目が羽田出発(20年1月29日)
・武漢チャーター機、羽田2タミサテライト”貸切”で感染防ぐ 普段は国内線用(20年1月29日)
機材関連
・ANA、777Xを21年3月末までに初受領 従来計画を維持(20年1月30日)
・三菱スペースジェット、6度目の納入延期へ(20年1月25日)
・737MAX、1月から一時生産停止 400機保管中(19年12月17日)
・ANA、737MAX計画変更せず 片野坂社長「ほとんど発注に近い」(19年12月13日)
ANAHDの決算
・ANA、19年4-9月期の純利益23%減 通期見通しは下方修正(19年10月30日)
・ANA、19年4-6月期営業益19.4%減 採用や整備費用かさむ(19年7月30日)
・ANAの19年3月期、売上高2兆円突破 営業益0.3%増(18年8月5日)
・ANA、18年4-12月期営業益5.6%減 アジア北米が好調(19年1月30日)