エア・ドゥ(ADO/HD)のパイロットで、2012年からボーイング767型機の機長を務めた古田貢章(みつあき)さんが12月27日、帯広発羽田行きHD66便(767-300、登録記号JA602A)で最後の乗務を終えた。同社には貢章さんの息子、古田航一さんも767の機長として務めており、貢章さんの最終乗務は“親子フライト”として、航一さんとともに担当。機長が2人乗務する「ダブルキャプテン」でラストフライトを飾った。
—記事の概要—
・ANA定年後に息子と合流
・技術だけでなく人格も
ANA定年後に息子と合流
古田貢章さんは1951年12月31日生まれ。今年の大晦日に68歳の誕生日を迎え、航空法により旅客機の機長としては定年を迎える。幼少期から乗り物に興味があり、近くに飛行場とヘリポートがあった環境で過ごしたことから、特に飛行機は身近な存在であったという。
エア・ドゥへ入社前は全日本空輸(ANA/NH)に在籍し、23歳で727の航空機関士として乗務を開始。その後は747の航空機関士、767の副操縦士、747-400の副操縦士を務め、777で機長に昇格した。その後、生涯唯一のエアバス機となるA320型機も、機長として操縦桿を握った。
貢章さんは「副操縦士だと何があっても最後には機長がいる、というのが頭のどこかにはある。そこが決定的に違う」と、777で初めて機長の発令を受けた当時を振り返った。
エア・ドゥへの入社は息子の航一さんが1年先輩で、2011年入社。貢章さんは、60歳でANAの定年を迎えた2012年に入社している。親子でのフライトは今回が初めてではなく、航一さんが副操縦士だったころを含め、数回あったという。2018年1月に航一さんが767の機長に昇格したことで、今回は親子によるダブルキャプテンという、日本では珍しいラストフライトになった。
技術だけでなく人格も
貢章さんの最終乗務日となった27日は1便のみの乗務で、帯広から羽田までの片道を親子で操縦した。運航責任者であるPIC(Pilot In Command)は貢章さんが務め、航一さんは、父をサポートする副操縦士業務を担当。ラストフライトとなった帯広発HD66便は、乗客161人(幼児4人含む)を乗せ、帯広を午後2時44分に出発し、午後4時28分に羽田へ到着した。乗務を終えた古田さん親子は、羽田にあるエア・ドゥの東京事業所で同僚たちに迎えられ、笑顔をみせた。
エア・ドゥによると、貢章さんが担当したHD66便の機長アナウンスでは、飛行高度や風の状況などの案内に続き「自身最後のフライト」であることを話したという。その際、一緒に操縦しているのが息子で、エア・ドゥの空の安全を引き継ぐと宣言すると、機内ではあたたかい拍手が起こったという。アナウンスを隣で聞いていた航一さんはそのとき、「家族として今までの記憶がよみがえって、涙がこぼれた」と、降機後に話した。
仕事と家庭内でのお互いの印象の違いを、「家族という関係がなくなりますので、全然違います」と語った貢章さんに対し、「家ではゆったりのんびりなので、フライトになったらスイッチが入るのかと思っていたら、そうでもなかった(笑)。ゆったりとした雰囲気の中でフライトが流れていくので、良い意味で驚いた」と、航一さんは父のマイペースぶりを披露した。
貢章さんは、「フライトは、お客様のためであり会社のため。技術だけでなく人格も磨きなさい。それがいいオペレーションにつながる」と、今後もパイロットとしてエア・ドゥの安全を担う航一さんを激励した。
貢章さんは、2019年10月3日に総飛行時間2万時間を達成。27日の最終便で達した2万130時間18分のうち、機長としてのフライトは9271時間26分だった。エア・ドゥ入社後の総飛行時間は3393時間39分で、このうち機長として3301時間0分を飛んだ。今後は同社の教官として、後進を育成していくという。
*写真は14枚。
古田貢章機長ラストフライト(括弧内は定刻/実績)
HD66 帯広(14:25/14:44)→羽田(16:10/16:28)
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