日本航空(JAL/JL、9201)が100%出資する国際線中長距離LCCのZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)は、ハワイ路線への進出も視野に準備を進める。エアアジアX(XAX/D7)が関西-ホノルル線を開設したり、全日本空輸(ANA/NH)が総2階建ての超大型機エアバスA380型機を就航させた後も需要が旺盛であることから、新路線の有力候補に位置づけている。
ZIPAIRは12月18日に、ボーイング787-8型機の初号機(登録記号JA822J)の機内をお披露目した。座席数は2クラス290席で、フルフラットシートを採用したビジネスクラスにあたる「ZIP Full-Flat(ジップ・フルフラット)」が18席、エコノミークラス「Standard(スタンダード)」が272席となる。
ラバトリー(化粧室)は7カ所のうち前方3カ所は、「LCCでは世界初と認識している」(ZIPAIRの西田真吾社長)というウォシュレット付き。全クラス全席に個人用画面を装備していないが、電源コンセントや充電用USB端子、タブレットホルダー(エコノミー)、Wi-Fi機器による機内インターネット接続にも対応するなど、フルサービス航空会社(FSC)と遜色のない機内環境を実現している。
1路線目は、2020年5月14日に就航する成田-バンコク(スワンナプーム)線。2路線目は機材繰りも関係し、短距離の成田-ソウル(仁川)線を2020年7月1日に開設する予定だ。
ZIPAIRは、787のエンジンが1基停止しても洋上飛行が一定時間可能な認証「ETOPS(イートップス)」の取得を目指しており、2021年としている現在の予定が前倒しできた場合、3路線目が北米西海岸路線になる可能性が出てきた。
「中長距離LCCは世界的に何社かあるが、成功モデルを証明できていない。その成功例になりたい」と、西田社長は話す。そうした中、ハワイは「マーケットが大きい」(西田社長)として、早期に就航する目的地の有力候補に挙がっている。親会社のJALは2020年3月29日開始の夏ダイヤから、現在1日4往復の成田-ホノルル線のうち、2往復を羽田へ移す。羽田の利便性を求める客層と、成田発着にすることで旅行代金を抑えたい層の二極化が進んだ際、利用者側にとってもLCCが就航していれば有力な選択肢になる。
そして、ZIPAIRが成功する上で不可欠な要素の一つが、定時性だという。「定時性は安全以外では一番優先度が高い。機材の稼働率向上に直結する」と、高い定時性を実現すれば顧客満足度につながるだけでなく、機材をより多く飛ばして収益に結びつけられるからだ。
上級クラスにフルフラットシートを採用し、エコノミークラスもJALの国内線用787と同等のシートピッチにしたZIPAIR。日本人に根強い人気を誇るハワイで、ホテルやアクティビティーによりお金をかけ、航空券代は抑える旅行が数年後には実現しそうだ。
*機内の写真はこちら。
関連リンク
ZIPAIR Tokyo
日本航空
写真特集・ZIPAIR 787-8の機内
(1)フルフラット上級席ZIP Full-Flatは長時間も快適
(2)個人用モニターなし、タブレット置きと電源完備のレカロ製普通席
機内の動画(YouTube Aviation Wireチャンネル)
・ZIPAIR 787-8 JA822J機内公開 フルフラットシートも
機内お披露目
・ZIPAIR、787の機内お披露目 上級席はフルフラット、全席モニターなしで軽量化(19年12月18日)
ZIPAIRの動き
・ZIPAIR、180億円に増資 JALが全額出資
・写真特集・ZIPAIR 787初号機成田到着(19年10月28日)
・なぜZIPAIRの787は白なのか JAL初期導入機活用の思惑(19年4月14日)
・JAL中長距離LCC「ZIPAIR」、機体デザインと制服発表 西田社長「働きやすさ重視」(19年4月11日)
・JAL中長距離LCC「ZIPAIR」、787で成田-バンコク・ソウル20年就航 米西海岸も視野(19年3月8日)