ボーイングは現地時間12月16日(日本時間17日)、2件の墜落事故が起きた737 MAXについて、2020年1月から生産を一時停止すると発表した。FAA(米国連邦航空局)など各国の航空当局による安全性の認証が来年にずれ込む影響と説明しており、現時点で従業員のレイオフは予定していない。生産再開は早くても2月から3月になるとみられる。
ボーイングは当初、10-12月期(第4四半期)中にFAAからの認証取得を目標にしていたが、FAA側が困難との見方を示し、年明けに延期された。これにより、1月からの商業運航再開も絶望的となり、737 MAXにはこれまで以上に厳しい目が向けられている。
737 MAXの生産は墜落事故後も続けられ、ボーイングによると製造済みの機体は約400機にのぼり、各所に保管されている。生産システムやサプライチェーンの健全性に長期的な影響はないとしており、工場の従業員をレイオフする予定はないとしている。従業員は737関連の別の仕事や、ほかの機体に関する仕事を一時的に割り当てられる見通し。
生産停止に関する財務情報は、1月下旬の2019年10-12月期(第4四半期)決算で開示するとしている。ボーイングは737の生産レートについて、2020年にこれまでの月産42機を57機に増産する計画だったが、進捗によっては見直しを迫られる可能性が高い。
737 MAXは737の発展型で、CFMインターナショナルの新型エンジン「LEAP-1B」を採用。翼端には新型ウイングレット「アドバンスト・テクノロジー・ウイングレット」を備え、客室内装はLED照明や大型の手荷物収納棚など、787と同等のものを取り入れた「ボーイング・スカイ・インテリア」を採用する。
標準型は737-800の後継となる2016年1月に初飛行した737 MAX 8(1クラス189席)で、もっとも胴体が短い機体で737-700の後継機737 MAX 7(同172席)、従来型では胴体がもっとも長かった737-900ERの後継機737 MAX 9(同220席)があり、11月には胴体長が最長となる737 MAX 10(同230席)がロールアウトした。
737 MAXの事故はこれまでに2件発生している。2018年10月に、インドネシアのライオン・エア(LNI/JT)のジャカルタ発パンカルピナン行きJT610便(737 MAX 8、登録記号PK-LQP)が、今年3月には、エチオピア航空(ETH/ET)のアディスアベバ発ナイロビ行きET302便(737 MAX 8、ET-AVJ)が、それぞれ墜落。いずれも737 MAXで新たに採用した失速防止システム「MCAS: Maneuvering Characteristics Augmentation System(操縦特性向上システム)」が要因となり、システムの改修を進めている。また、FAAやボーイングの安全に対する姿勢も、米国内外から批判にさらされている。
日本国内では、全日本空輸(ANA/NH)を傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)が、737 MAX 8を最大30機発注する方針で、片野坂真哉社長は12月13日に計画を変更しない方針を示している。
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