女性パイロットや整備士、重工メーカー社員が空の仕事を学生たちに紹介する「女性航空教室」が12月15日、東京・新橋の航空会館で開かれた。首都圏在住の大学生や専門学生を中心に78人が参加し、男性の職場というイメージがまだまだ強い航空業界で活躍する先輩たちの話に聞き入った。沖縄など遠方から参加した人や、今回の募集年齢には満たないながらも参加を強く希望した中学生の姿もあった。
今年はパイロットは全日本空輸(ANA/NH)とソラシドエア(SNJ/6J)、朝日航洋、整備士はエア・ドゥ(ADO/HD)とJALエンジニアリング(JALEC)、ANA、朝日航洋、製造技術者はIHI(7013)とSUBARU(7270)の講師が登壇。それぞれの仕事内容を紹介した。
—記事の概要—
・整備士とダブルチェック
・出歩いてむくみ解消
・「特別な仕事ではないけど、特殊な仕事」
整備士とダブルチェック
ANAの土谷紗代副操縦士は、主に操縦を担当する「PF(パイロット・フライング)」と運航状況の監視を担う「PM(パイロット・モニタリング)」と、コックピットに乗務する2人のパイロットの役割分担を説明した。
「外部点検では、タイヤの摩耗など整備士さんも点検していますが、ダブルチェックをしています」(土谷さん)と、空港でパイロットが機体を点検している理由に触れた。この間、コックピットに残ったPMは、フライト情報やエンジンの出力などをコンピューターに入力したり、貨物室に危険品がある場合の扱いなどを確認しているという。
パイロットや客室乗務員(CA)は、同じメンバーで飛ぶことが少ない。乗客を迎え入れる前に実施するCAとのブリーフィングについて、土谷さんは「同じ人と飛ぶことはめったにありません。それだけに、CAさんの心をグッとつかむことが大切です」と、一丸となって運航する必要があるブリーフィングで、クルーが打ち解けることの重要性を語った。
出歩いてむくみ解消
ソラシドの上條里和子(りなこ)副操縦士は、パイロットになるまでの課程や、勤務パターンを説明。小さいころからパイロットという職種を思い描いていたものの、「高校生になるまでは特に何もしていませんでした」と明かす上條さんは、大学では航空宇宙システム工学を専攻し、国の航空大学校を経てソラシドにパイロット訓練生として入社した。2018年から同社が実施している初日の出フライトでは、コックピットから乗客にルートを説明するといった仕事にも携わっている。
「上着は脱いで操縦するんですよ」と話す上條さんは、コックピットと同じくジャケットを外した姿で学生たちに語りかけた。1日あたり3レグ(区間)=3便の乗務が基本となり、日帰りや宿泊時は長いときで3泊4日になる乗務パターンにふれた。わずかな便間の時間に次便の準備やトイレを済ませ、昼ご飯は「フライト中に交代で食べます。景色はすばらしいですが、狭いコックピットで食べています」と、華やかなイメージとは裏腹な現実を開かした。
ステイ先では、積極的に出歩いているという上條さん。「ずっと座っていることや、塩分が多い機内食を食べるので足がむくみます。むくみを解消するため、ステイ先では出歩くようにしています」(上條さん)と話し、その時の様子を写真で紹介していた。
「特別な仕事ではないけど、特殊な仕事」
女性航空教室は、業界団体が中心となって毎年12月に開いており、今回は航空業界への就職を志望する16歳から30歳の女性を対象に開いた。主催は公益社団法人の日本航空機操縦士協会(JAPA)と日本航空技術協会(JAEA)、一般社団法人の日本航空宇宙工業会(SJAC)、全日本航空事業連合会、日本女性航空協会(JWAA)で、国土交通省航空局(JCAB)と経済産業省製造産業局、文部科学省研究開発局が後援している。
上條さんは「パイロットは特別な仕事ではないけど、特殊な仕事です。皆不安を払拭するために努力しており、常に心の中には自信と不安があるのだと思います」と、パイロットの心中にふれた。「皆さんには、パイロットになる資格があると思います。なぜならば、自分で門戸を叩いているから」と、自らの意志で教室に参加した学生たちの背中を押した。
一方で、少子化が進む日本では、学生を中心に航空業界そのものに興味を持ってもらう取り組みも不可欠だ。JAEAの佐藤信博会長は、「裾野を広げていく活動が大切だ」と述べ、若年層に空の仕事の魅力を、これまで以上に業界を挙げて発信していくことの重要性にふれた。
関連リンク
skyworks
日本航空機操縦士協会
日本航空技術協会
日本航空宇宙工業会
全日本航空事業連合会
日本女性航空協会
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