全日本空輸(ANA/NH)の平子裕志社長は12月13日、2020年夏ダイヤで就航予定の羽田路線がダイヤ初日の3月29日から運航できないことについて、ボーイング787型機に搭載する英ロールス・ロイス(RR)製エンジンの改修による、パイロット移行訓練計画に差異が生じたためだと説明した。RRは東京五輪前にはANA機の改修を終わらせる計画で作業を進めている。
—記事の概要—
・時間差で就航
・羽田・成田で「デュアルハブ」
時間差で就航
ANAは、2020年夏ダイヤで拡大する羽田空港の昼間時間帯発着枠50枠のうち、13.5枠を獲得。すべての就航先を発表したものの、米国5路線とインド路線以外は就航日を「夏ダイヤ期間中」とし、運航開始日が明らかになっていない。また、一部路線を除き、便数も発表していない。
平子社長は「路線を一気に立ちあげるには、現地の準備を整える必要がある。パイロットの路線訓練なども、一気にかかってくる」と説明。同時に就航するのではなく、時間差を設けて運航を開始する意向を示した。
ANAは、ファーストクラスのある長距離路線や一部の中近距離路線を除き、国際線の主要機材を787に統一している。一方で、787に搭載するRR製エンジン「トレント1000」の不具合により、2016年から一部の機体が地上待機(グランド)となり、運航できない状態が続いている。平子社長はグランドが大量に発生したとし、「乗員の移行訓練に大きな狂いが生じた。機種と乗員のバランスがやや崩れ、乗務員はいるものの、最大限活用できる状態ではなかった」と説明した。
RRは東京五輪前にANA機の改修を終わらせる予定で、Aviation Wireの調べでは10機以上あったグランドしている787が、現在は4機以下になっている。RRのウォーレン・イーストCEO(最高経営責任者)は、Aviation Wireの単独取材に対し、2020年中ごろまでに全世界でRRのエンジン問題によりグランドしている787は、一桁になるとの見方を示している。
一方、今回の羽田発着枠の増枠は都心上空を飛ぶ飛行ルートへの変更により確保したことから、国は夏ダイヤ初日から有効活用されることを前提に準備を進めており、自治体や海外の航空会社からは発着枠活用を求める声が挙がっている。監督する国土交通省航空局(JCAB)は、ANAに対して新路線を可能な限り早期に就航させるよう求めている(関連記事)。
羽田・成田で「デュアルハブ」
夏ダイヤから運航を始める路線のうち、7路線が新規路線で、残り6路線を成田路線の移管や運休などで開設する。ANAは成田と羽田を活用する「デュアルハブ」戦略を打ち出し、成田では国際線同士、羽田では国内線と国際線の乗り継ぎを重視している。
平子社長は成田からの路線移管について、「国内の利用客は、成田経由で米国へ向かうのが困難な地域もある」とした上で、「国内路線は羽田が圧倒的に強い。羽田に北米路線を一部移管し、日本各地からの北米への接続を強化する」とした。
成田では、従来どおりの国際線と国際線の乗り継ぎ需要の獲得を強化し、「デュアルハブ」で2空港を使い分ける意向を示した。
関連リンク
全日本空輸
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