MRJ, 機体, 解説・コラム — 2019年12月12日 22:58 JST

三菱航空機、米モーゼスレイクの飛行試験拠点公開 スペースジェット改称後初「最終段階迎えつつある」

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 三菱重工業(7011)傘下の三菱航空機は現地時間12月10日(日本時間11日)、リージョナルジェット機「三菱スペースジェット」の米国での飛行試験拠点「モーゼスレイク・フライトテスト・センター(MFC)」を報道関係者に公開した。グラントカウンティ国際空港に隣接する施設で、6月に「MRJ(三菱リージョナルジェット)」から改称後の公開は初めて。

モーゼスレイクのグラントカウンティ空港にある格納庫からプッシュバックされる三菱スペースジェットの飛行試験3号機=19年12月10日 PHOTO: Kiyoshi OTA/Aviation Wire

—記事の概要—
岩佐センター長「最終段階迎えつつある」
飛行試験機は最大7機
M100ローンチはまだ

岩佐センター長「最終段階迎えつつある」

 三菱航空機は機体の安全性を国が証明する「型式証明(TC)」の取得に向け、4機の飛行試験機を使い、MFCで飛行試験を進めている。国土交通省航空局(JCAB)は今年3月3日から、TC飛行試験(型式証明飛行試験)を始めた。

モーゼスレイクで滑走試験を実施する三菱スペースジェットの飛行試験3号機=19年12月10日 PHOTO: Kiyoshi OTA/Aviation Wire

インタビューに応じる三菱航空機の岩佐モーゼスレイク・フライトテスト・センター長=19年12月10日 PHOTO: Kiyoshi OTA/Aviation Wire

 同社の岩佐一志モーゼスレイク・フライトテスト・センター長によると、飛行試験は最終段階に近づいているという。現在示されているスペースジェットの納期は2020年半ばで、2017年1月23日に示された5度目の延期のものだ。

 当初は2013年だったが、その後2014年4-6月期、2015年度の半ば以降、2017年4-6月期、2018年中ごろとずれ込み、現在の2020年半ばとなった。

 現在のスケジュールで納入を開始する場合、2020年前半にはTCを取得する必要がある。岩佐センター長は「型式証明の取得に向けた飛行試験は、最終段階を迎えつつある」と述べ、現時点でスケジュール変更はないという。

飛行試験機は最大7機

 一方で、ボーイング737 MAXの墜落事故が相次いだことから、FAA(米国連邦航空局)がTCなどの認証を厳格化する動きがあり、JCABの審査にも影響する可能性がある。また、飛行試験の進捗は天候にも左右される。モーゼスレイクは有視界飛行が年間350日可能なほど天候が良好な地域だが、MFCが公開された10日は天候不良のため、予定されていた飛行試験がキャンセルとなり、誘導路を走行する滑走試験のみが公開された。

モーゼスレイクの格納庫に駐機中の三菱スペースジェットの飛行試験3号機(左)と2号機=19年12月10日 PHOTO: Kiyoshi OTA/Aviation Wire

モーゼスレイク・フライトテスト・センターのEFSルームで写真撮影に応じる三菱航空機の安村機長=19年12月10日 PHOTO: Kiyoshi OTA/Aviation Wire

 年明けには、設計変更を反映したTC取得時に使う飛行試験機(通算10号機)による試験が始められる見通し。三菱航空機によると、飛行試験に投入する機体は最大7機になるという。

 10号機の完成が遅れていることから、モーゼスレイクで使用中の4機を改修しながら遅れに対応している。

 チーフテストパイロットの安村佳之機長によると、現在は約20人のパイロットが試験に携わっており、「4機体制では十分」と語った。

 岩佐センター長は、「日本にはテストパイロットのマーケットはないが、米国ではマーケットから採用できる」と、人員確保は問題ないとの見方を示した。

M100ローンチはまだ

 スペースジェットの総受注は287機で、内訳は確定受注が163機、オプションと購入権が124機。10月31日に地域航空会社3社を持つ米トランス・ステーツ・ホールディングス(TSH)が最大100機購入する契約をキャンセルしたことで、現在の数字になった。

モーゼスレイクで滑走試験を終え格納庫前に駐機する三菱スペースジェットの飛行試験3号機=19年12月10日 PHOTO: Kiyoshi OTA/Aviation Wire

 MRJとして開発がスタートしたスペースジェットは、当初はメーカー標準座席数が88席の標準型「MRJ90」と、76席の短胴型「MRJ70」の2機種構成だった。これが今年6月に「三菱スペースジェット(Mitsubishi SpaceJet)」に名称を改めると同時に、MRJ90を「SpaceJet M90」と改称。米国市場に最適化した機体サイズの70席クラス機「SpaceJet M100」を、M90を基に開発する計画だ。

 M100について、岩佐センター長は「正式なローンチはまだだが、米国を中心に評価が非常に高い」と語った。

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