エアライン, ボーイング, 機体, 空港, 解説・コラム — 2019年12月1日 09:00 JST

サイパンへの日本人客復権なるか 特集・スカイマーク初便に乗ってみた

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 スカイマーク(SKY/BC)が11月29日に開設した成田-サイパン線。これまでチャーター便として実績を重ね、定期便化にこぎ着けた。これまで、国際線はチャーター便のみの運航で、サイパン線がスカイマーク初の国際定期便となる。

 記者(私)は、29日の成田発初便に搭乗した。現地では1泊し、翌30日に日本に戻った。機内の様子はどうだったのか、機内食はどうか──。サイパンの現状も合わせ、駆け足で紹介する。

サイパン行き初便の乗客に飲み物を提供するスカイマークの客室乗務員=19年11月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

—記事の概要—
初便の半数近くは関係者
やること多い客室乗務員
サイパンデザインのキットカット、間もなく
ネットから隔離された4時間
サイパン線はETOPS必須
サイパン発は「チャモロ料理」
中韓の観光客多いサイパン

初便の半数近くは関係者

 成田発の初便となった29日のサイパン行きBC811便(ボーイング737-800型機、登録記号JA73NL)は、179人(うち幼児2人)が利用。スカイマークの737は1クラス177席で満席となったものの、このうち半数近くが関係者向けだった。同便は午前10時20分に出発し、同40分に離陸した。

 初便の利用客には、スカイマークの市江正彦社長らが、搭乗時にハンカチなどの記念品を手渡した。サイパン線の機内には、サイパンをはじめとしたマリアナ諸島を紹介する小冊子を搭載した。

 離陸後、同乗したスカイマークの佐山展生会長があいさつ。関係者が多かったこともあり、「国際線定期便は初めてで慣れていない。意見がほしい」と感想を求めた。その後、機内を練り歩き、乗客1人ひとりに声をかけた。

サイパン行き初便に搭乗しあいさつするスカイマークの佐山会長=19年11月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

乗客と交流するスカイマークの佐山会長=19年11月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

あいさつ後に客室乗務員に声をかけるスカイマークの佐山会長(中)=19年11月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

やること多い客室乗務員

 間もなく提供を開始した機内食は、手まりすしやユズのなますなど、冷製のものを用意。チャーター便ではジャルロイヤルケータリング(JRC)が調理していたが、定期便化以降はティエフケー(TFK)が担当する。スカイマークによると、質は変わらないという。ドリンク類はコーラや水、お茶などのソフトドリンクのほか、ビールやワインなどのアルコール類も準備していた。成田発のビールはキリン一番搾りのみだった。

 国内線では、サービス品のキットカットのほか、一部路線で無料提供しているコーヒーを配る。国際線では、サイパンへの入国カード、機内食と飲み物を配る。もちろん、キットカットも用意している。

 客室乗務員はてんてこ舞いだ。忙しそうに機内を行ったり来たりする。737は単通路機で、機内食などを運ぶカートが通路を占領し、狭そうに見えた。機内食の提供中に機内後方のトイレに行く人が続出。すれ違うことも困難で、そのたびにカートをトイレ近くにあるギャレー(厨房設備)までも戻す必要があった。

 このほか、初便限定でオリジナルデザインのエコバッグも配布。サイパンの店舗などで提示すると割引特典を受けられる「スカイマークパスポート」といっしょに手渡した。

 ある客室乗務員は「国内線と比較しやることが多い。ギャレーも全然違う」と話したものの、表情は充実感にあふれていた。

サイパン行き初便の乗客に機内食を手渡すスカイマークの客室乗務員=19年11月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

スカイマークのサイパン行き初便で提供する機内食=19年11月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

スカイマークのサイパン行き初便に投入した737-800のギャレー=19年11月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

スカイマークのサイパン行き初便で提供するドリンク類=19年11月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

サイパン行き初便の乗客に記念品を手渡すスカイマークの客室乗務員=19年11月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

スカイマークのサイパン行き初便の乗客に配布した記念品=19年11月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

サイパンデザインのキットカット、間もなく

 国内線で提供するキットカットを、国際線でも用意しているのか。私は搭乗前に気になっていたが、前述のとおり国際線でも同様に提供していた。

 スカイマークが機内で配るキットカットは、パッケージに就航地のイラストが描かれている。個人的には搭乗するたびに「今回はどの都市か」と楽しみにしている。サイパンをデザインしたパッケージも間もなく登場する見込みで、現在はデザインを詰めている段階だという。

 ちなみに今回、私がもらったのは那覇だった。

ネットから隔離された4時間

 関係者を除く一般の乗客は、若い家族連れのほか、男性客が多く目に付いた。機内にはIFE(機内エンターテインメント)がなく、機内Wi-Fiも搭載していない。サイパンまでは4時間近くかかる。乗客の多くは、読書や仲間どうしでの会話、睡眠など、インターネットからの強制的な隔離時間を過ごしていた。中には、スマートフォンの写真を見返してみたり音楽を聴いたりなど、完全な“デジタルデトックス”にはなっていないケースもみられた。

 私の近くに座った男性2人組は、初便を狙って搭乗。「航空券の入手に苦労した」と販売日を振り返った。彼らは写真や動画を、スマートフォンではないカメラで熱心に撮影するなど、初便を満喫した様子だった。

 その後、男性2人組は折り返し便で成田に戻った。折り返し便が出発するまではおよそ1時間半。彼らは「パスポートにスタンプが押されているから、サイパンには入国したことになる」と話し、足早に乗り込んだ。次回こそ、もう少しゆっくり過ごしてもらいたいものだ。

サイパン国際空港でスカイマーク初便の利用客を迎えるバナー=19年11月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

スカイマークがサイパン線に搭載する小冊子=19年11月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

スカイマークのサイパン行き初便の利用客に配布した記念品=19年11月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

サイパン線はETOPS必須

 サイパン線は現地政府が働きかけたことも、就航実現の要因のひとつとなっている。エンジンが1基停止しても洋上飛行が一定時間可能な「ETOPS(イートップス)」について、航空当局から取得した機材をスカイマークが保有していることから、現地政府から声がかかったと、市江正彦社長は以前に述べている。

 スカイマークは現在、737-800を29機保有している。このうち8機がETOPS機。サイパン国際空港支店の八田勇太朗さんによると、サイパン線へはETOPS機の投入が必須なのだという。

 通常はパイロット2人、客室乗務員4人の計6人が乗務するサイパン線は、初便のみパイロット3人、客室乗務員5人の計8人で運航。乗務員はサイパンで宿泊せず、折り返し便も同じ乗務員で運航する。

スカイマークがサイパン線に投入する737-800。主脚付近にETOPS機であることを示すサインが入っている=19年11月29日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

サイパン発は「チャモロ料理」

 私は翌30日のサイパン発BC816便(737-800、JA73NL)で帰国。初便と異なり、機内はゆったりと使用できた。隣席にも誰も来なかったので、原稿を書くテーブルとドリンクを置くテーブルを別々で使用し、ややぜいたくさせてもらった。

 サイパン発の機内食は、ルフトハンザグループのLSG Sky Chefs社が製造。前出の八田さんによると、サイパンのケータリング会社はLSGの1社のみだそうだ。

 機内食は、サイパンなどで食べられる「チャモロ料理」を用意。肉を細かく刻んで、レモン汁や塩、ココナツ、トウガラシで味付けした「ケラグエン」を、薄焼きパンの「ティティヤス」とともに提供した。どちらもどうやら、伝統的なチャモロ料理なのだそうだ。

 味はまったく問題ない。チキンがホロホロで適度に塩気も効き、ビールが進みそうな味だ。しかもサイパン発便では、サイパンの地ビールも提供している。私は帰国後に車で帰宅するので、機内での飲酒はグッと我慢した。ああ、コーラではなくビールが飲みたい……。

 ただ1つ、気になった点があったとすれば、容器がかさばっていたことだ。

 客室乗務員は容器を回収し、ギャレーに戻る。ギャレーで容器を置き、また回収しに行く。見ていると数往復していた。客室乗務員の1人は、「前回(チャーター便)はボックス型だった。定期便では容器がかさばって大変だ」と笑いながら話してくれた。

LSGの機内食を搭載するスカイマークのサイパン発成田行きBC816便=19年11月30日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

スカイマークのサイパン発成田行きで提供する機内食=19年11月30日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

スカイマークのサイパン発成田行きで機内食の容器を片づける客室乗務員=19年11月30日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

スカイマークのサイパン発成田行きで提供するサイパンの地ビール=19年11月30日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

中韓の観光客多いサイパン

 サイパンの中心部・ガラパン地区。スカイマークの直行便就航を祝い、装飾が施されていたものの、街の中は韓国人や中国人の旅客が多く、日本人はほとんど見かけることがなかった。空き店舗も多く見られ、活気が失われた街のように思えた。

 1990年代、サイパンは日本人に人気のある観光地だった。日本からサイパンへの渡航者は最盛期は45万人で、現在は4万人程度。最盛期の10分の1程度にしぼんでしまった日本人客の復活を、地元政府としてはスカイマークに賭けているのかもしれない。

 レストランも中華や韓国料理店が多かったものの、日本料理を提供する店もまだまだ営業を続けているようだ。一方で、地元のチャモロ料理を提供する店はほとんど見つけられなかった。私は国内外問わず、地のものを食べるようにしている。今回もチャモロ料理を楽しみにしていたが、結局初日の夜はチャーハン、帰国日の朝兼昼は大きなハンバーガーで済ませた。

 私がチャモロ料理にありつけたのは、帰国便の機内だった。

  ◆

 サイパンにもう一度日本人客を呼び込むのは、簡単なことではないかもしれない。利用客を増やすのはスカイマークだけでも可能だろうが、街の魅力度が上がらないとリピーターも増えないだろう。

 サイパンにはきれいな海という、強力な“武器”がある。マリンスポーツ頼りにならず、ほかの観光資源を開発できれば、日本から近い南国リゾートの復権は近いように思われる。そのためには、スカイマークも地元政府に協力する必要があるだろう。

 今回は1泊2日で、滞在時間24時間程度。ホテルではずっと仕事していて、きれいな海はホテルのバルコニーから眺めただけだ。次回は妻を連れて行き、きれいな海を見せてあげたい。そのときは、サイパンがどのくらい変化しているのかも楽しみにしたい。

*写真は21枚。
*運航スケジュールは写真の下にあります。

サイパンの中心部・ガラパン地区でスカイマークの直行便就航を祝い施された装飾=19年11月30日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

サイパンの中心部・ガラパン地区でスカイマークの直行便就航を祝い施されたバナー=19年11月30日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

サイパンの中心部・ガラパン地区の海岸=19年11月30日 PHOTO: Yusuke KOHASE/Aviation Wire

運航スケジュール
成田-サイパン
BC811 成田(10:15)→サイパン(15:00)運航日:毎日
BC816 サイパン(16:35)→成田(19:30)運航日:月火水木金日
BC816 サイパン(17:05)→成田(20:00)運航日:土

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