英ロールス・ロイス(RR)のウォーレン・イーストCEO(最高経営責任者)は11月28日、同社のボーイング787型機用エンジン「トレント1000」の改修について、2020年中ごろには地上待機を余儀なくされる機体数が、全世界で一桁にまで作業が進むとの見通しを示した。最大顧客である全日本空輸(ANA/NH)のエンジンについては、東京オリンピックが開催される2020年には終えられるように進めている。
トレント1000の不具合は、エンジン内にある中圧コンプレッサー(IPC)のローターブレードに関するもの。亀裂が生じることで飛行中にブレードが飛び散り、機体の操縦性を低下させる可能性があることがわかった。このため、RRは耐久性を高めたエンジン部品の供給を開始し、全世界で改修を進めている。
28日に都内でAviation Wireの単独インタビューに応じたイーストCEOは、トレント1000のトラブルについて、「グランド(地上待機)している機体は大幅に減っている。2020年の中ごろには、グランドしている787の数は、全世界で一桁になると考えている」と、今後の見通しを語った。
「ANAは非常に重要な顧客。ご迷惑をお掛けしたことは、常に申し訳なく思っている。われわれの作業に対し、密接に協力してくださったことにも感謝している」と述べ、ANAでもグランドしている機体数が1年間で大幅に減少しているなど、東京オリンピックに向けて改修が進んでいるという。
トレント1000は大別すると「パッケージA」から「パッケージC」まで3種類あり、RRは数がもっとも多いパッケージCから改修を始めた。不具合についてイーストCEOは、「3種類の問題と、3タイプのエンジンがあり、合わせて9種類の問題ある。このうち8つはソリューションが出来上がっており、必要な部品を交換することでエンジンの健全性を高めている。残り一つも、2021年中ごろにはソリューションを提供できるだろう」と述べた。
「ANA以外にも、約20社が(787のエンジンとして)トレント1000を選定してくださっており、そうした航空会社の運航に支障をきたしてしまった」とイーストCEOは説明。予備エンジンを多く用意することで、運航への影響を最小化するなどの対策も、改修と並行して講じてきたという。
ANAを傘下に持つANAホールディングス(ANAHD、9202)の片野坂真哉社長は10月29日に、787を2020年度から全機稼働できるとの見通しを明らかにしている。
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