エアライン, 空港, 解説・コラム — 2019年11月28日 00:00 JST

JAL、空港接客No.1に羽田・西野さんとロンドン・ザヒアさん 現制服最後のコンテスト、羽田国際線が三連覇

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 日本航空(JAL/JL、9201)は11月27日、地上係員(グランドスタッフ)が接客スキルを競う「空港サービスのプロフェッショナルコンテスト」を、東京・羽田の訓練施設「第1テクニカルセンター」で開いた。

JALの第7回空港サービスのプロフェッショナルコンテストで優勝した羽田空港の西野さん(中央)=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 第7回となった今回の本選には、国内空港部門9人と海外空港部門5人の計14人が進出。国内部門は羽田空港の国際線担当(KI)の西野恵理さんが、海外部門はロンドン・ヒースロー国際空港のアーメド・ザヒアさんが優勝した。羽田は第5回から3大会連続で通算4回目、ロンドンは海外勢では初めて欧州の空港として優勝を勝ち取った。

 コンテストの第1回目は、空港のチェックインカウンターを模した「空港サービスモックアップ」を同センター内に設け、1周年を迎えた2013年2月に開催。地上係員のサービス向上を目指して始めた。JALは2020年4月から新制服に刷新することから、今回が現行制服で開く最後のコンテストになった。

優勝した西野さん(右から3人目)とザヒアさん(左から3人目)、準優勝の千代森さん(左から2人目)とアグイリングさん(左)、審査員特別賞の石原さん(右)と重満さん(右から2人目)=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの第7回空港サービスのプロフェッショナルコンテストの開会式であいさつする前田空港本部長=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 現在JALの地上係員は国内外合わせて約5800人が在籍している。今回の開催目的について、空港本部長を務める前田淳・執行役員は「コンテストなので最後には優勝が決まるが、皆さんが日々空港で発信している価値を共有し、各空港に持ち帰って広げていただきたい」と開会式であいさつし、出場者同士で良い点を共有することで、グループ全体で価値を高めていく重要性にふれた。

 本選前日の26日に開かれた最終予選には、国内空港から47人、海外から13人の計60人が進出。27日の本選には、国内8空港9人、海外5空港5人が出場した。午前に海外空港部門、午後に国内空港部門が開かれ、「安全」「多様性」「人間力」を審査ポイントに置き、出場者はチェックインカウンターやロビーを行き交うさまざまな利用者を応対した。

—記事の概要—
常に危険物持ち込み確認したザヒアさん
風船の扱いに気づく西野さん
前回優勝永見さんも指導し羽田三連覇

常に危険物持ち込み確認したザヒアさん

 これまでのコンテストでは、日本語と英語によるアナウンス審査と、チェックインのロールプレイ(実技)審査を別々に実施していた。今回は、海外部門ではこの流れを踏襲したが、国内部門はロールプレイとアナウンスを同時に審査する形で進められた。

所持品に危険物がないかを女性客に確認するヒースロー空港のザヒアさん=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 午前の海外部門では、虫よけスプレーを所持した日本に向かう利用者、高齢の利用者、キャリアウーマン、ビジネスマン、フランス国籍で英語も日本語も話せない利用者と、教官が扮(ふん)するさまざまなタイプの利用者役が登場した。

 虫よけスプレーは受託手荷物や容量をクリアしている場合であれば機内に持ち込めるが、殺虫剤はいずれも不可であるといった危険物に対する知識や、接客中に搭乗口の番号が小さくて読めないという高齢の女性客に、やさしく適切に応対できるか、出張で搭乗する便の出発時刻を1時間早く勘違いしてロビーを走ってくるキャリアウーマンに、間に合って良かったと応対できるか、搭乗しないものの翌月に家族旅行を考えているビジネスマンにJALのサービスを紹介して利用したいと感じてもらえるか、言葉が通じない利用者にも丁寧で相手が望む接客ができるかといった点が評価された。

 海外部門で優勝したザヒアさんは、ヒースロー空港の地上係員として11年のキャリアがあるが、JALを担当するようになったのは1年半前から。ザヒアさんはさまざまな利用者に対し、必ず危険物の所持を確認するボードを提示し、手荷物の安全確認をしながらも丁寧で不安を抱えた相手も安心する応対をしていた。

 また、ほかの出場者がフランス語のみ話せる女性客に対し、英語か日本語が話せるかを尋ねる中、ザヒアさんはフランス語で応対できてしまい、運営側も想定外だったようだ。

風船の扱いに気づく西野さん

 一方、ロールプレイをしながらアナウンス審査も行われた午後の国内部門では、出場者が自己紹介を終えると、1人目の利用者となる、自動チェックイン機を使いたい高齢の女性が登場。その後も2人組の男性外国人利用者の接客をしようとすると、インチャージ(責任者)がやってきて出発便のアナウンスを指示するシナリオで、実際に空港の現場で起きている状況に近い設定で審査が進んだ。

外国人男性客にスティックバルーン(風船)の扱いを説明する西野さん=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 その後も、普段はJAL便を使っているものの、会社が手配した航空券が別の航空会社のものだったビジネスマンや、ヘルプマークを所持した女性利用者が登場。東京オリンピック前に日本を一度訪れたかったという外国人客は、棒状の風船を所持しており、そのままでは機内に持ち込めない点などが採点ポイントになった。

 ヘルプマークを持った女性客は、第一子が妊娠3カ月目で不安を抱えていたり、今回は別の航空会社を利用するビジネスマンは、初めてハワイに家族旅行する予定で、普段はJALに乗っていながらも利用する航空会社を迷っており、自社を上手に推薦できるかといった点が審査された。

 国内部門で優勝した西野さんは、風船を持った外国人客に対し、搭乗前に空気を抜いてもらう必要性を流ちょうな英語で説明していた。

前回優勝永見さんも指導し羽田三連覇

 審査の結果、西野さんとザヒアさんが優勝したほか、準優勝が関西空港の千代森奏恵さんとマニラ・ニノイ・アキノ国際空港のボブ・ジュリアン・アグイリングさん、審査員特別賞に羽田国内線担当(KD)の石原愛さんとホノルル・ダニエル・K・イノウエ国際空港の重満真美さんが選ばれた。

優勝を告げられ喜ぶ西野さん=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

西野さんが優勝し喜ぶ永見さん(左)ら=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

 西野さんは「信じられませんでした。昨日(の最終予選)もここで終わったら(先輩や同僚に)見せる顔がないと思っていました」と、不安から解放された笑顔を見せた。

 ザヒアさんは「うれしさを表わす言葉が見つけられないです。安全第一とお客様目線でサービスをしました」と、自分が利用者として経験したことを生かしながら接客したという。

 西野さんは、前回の国内部門で優勝した羽田国際線担当・永見愛里さんの後輩で、練習では永見さんも指導に参加した。西野さんの審査中は祈るような表情で見守っていた永見さんは、西野さんの優勝が発表されると、同僚とともに安堵(あんど)した表情を見せながらも我がことのように喜びを爆発させていた。

 羽田に三連覇をもたらした西野さんは、「羽田には海外からたくさんの方がいらっしゃるので、おもてなしで皆さんにJALを好きになって欲しいです」と抱負を述べた。

 本選に進んだ14人には、アルメリアの花をデザインした銀バッチが貸与された。アルメリアの花言葉は「おもてなし」。銀バッチはJALのおもてなしの模範となる地上係員であることを社内外に対して示すもので、歴代の本選出場者「サービス・アドバイザー」が着用している。

*写真は17枚。

JALの第7回空港サービスのプロフェッショナルコンテストの本選出場者=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの第7回空港サービスのプロフェッショナルコンテストで優勝したヒースロー空港のザヒアさん=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの第7回空港サービスのプロフェッショナルコンテストで1人目の高齢女性利用者を接客する西野さん=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの第7回空港サービスのプロフェッショナルコンテストでアナウンス審査に挑む西野さん=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの第7回空港サービスのプロフェッショナルコンテストで西野さんの審査を見守る前回優勝者の永見さん(左)=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

羽田の訓練施設で開かれたJALの第7回空港サービスのプロフェッショナルコンテスト=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの第7回空港サービスのプロフェッショナルコンテストで優勝しあいさつするザヒアさん=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの第7回空港サービスのプロフェッショナルコンテストで優勝しあいさつする西野さん=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

優勝した西野さん(右)とザヒアさん=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

JALの第7回空港サービスのプロフェッショナルコンテストの出場者と審査員=19年11月27日 PHOTO: Tadayuki YOSHIKAWA/Aviation Wire

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