日本航空(JAL/JL、9201)は11月19日、成田空港を発着する国際線を2020年度内に3-5路線拡充する方針を示した。100%出資する5月就航予定の中長距離LCCであるZIPAIR(ジップエア)の路線を1路線程度含めたもので、北米とアジアの国際線を結ぶ「際際接続」の需要を狙った路線を中心に、新路線や増便の検討を進める。
—記事の概要—
・現状下回らない便数に
・FSCに近いサービス目指すZIPAIR
現状下回らない便数に
成田を発着するJALの国際線は現在31路線40便(往復)で、夏ダイヤ開始日の2020年3月29日時点で27都市34路線に一時減少。羽田空港の発着枠増枠に伴い路線移管をするためで、羽田は現在の15路線22便が3月29日の段階で24都市34便に増える。成田の減少は生産体制の移行によるもので、2020年度末までには41-43便となる計画で、現状の40便は下回らない見通し(羽田新路線はこちら)。
19日に都内で会見を開いたJALの赤坂祐二社長は、「一時的に(羽田への移管を)そのまま埋める形になってないが、路線開設は準備が必要。パイロットの移行訓練も時間がかかる」と述べ、人員など生産体制が整った段階で再び成田の路線数を増やす。「成田は際際ハブで、北米とアジアのど真ん中に位置する地政学的に重要な空港。ZIPAIRなど新しいものを作る空港として活用したい。次の滑走路もあるので可能性がある」(赤坂社長)と、語った。
国際路線事業本部長の大貫哲也常務は、「東南アジアとの乗り継ぎを意識しており、夕方発着は成田に残る」と、北米とアジアの接続需要を重視する姿勢を示した。
2020年の成田路線は、成田-ウラジオストク線を2月28日から、ベンガルール(バンガロール)線を3月29日から運航を始める。また、成田-サンフランシスコ線を3月29日から、成田-シカゴ線を2021年2月15日から再開し、成田-グアム線も7月1日から増便する。追加の3-5路線はこれらを除いたものとなる。
FSCに近いサービス目指すZIPAIR
ZIPAIRは成田空港の第1ターミナルを拠点とし、機材はJALからリース導入する2機のボーイング787-8型機でスタートする。座席数は290席で、JALの同型機と比べて約1.5倍となり、1機目はJALの導入2号機(登録記号JA822J)、2機目は導入初号機(JA825J)を使用する。1年に2機ずつ増やし、就航2年で黒字化を目指す。
1路線目の成田-バンコク(スワンナプーム)線は2020年5月14日、2路線目の成田-ソウル(仁川)線を同年7月1日に開設予定。2020年度内はアジア方面を軸にもう1路線程度開設する見込みで、2021年にも米西海岸就航を目指す。
ZIPAIRのサービスについて、赤坂社長は「フルサービス航空会社(FSC)に近いプロダクトを提供できれば」と述べ、従来のLCCよりもJALのようなFSCを意識したサービスをする意向を示した。
一方で、成田の国際線や国内線を、傘下のLCCに移管するとの見方は否定。「際際ハブとは言うものの、訪日客の地方誘致に国内線は必要。自社の国内線と合わせ、ジェットスター・ジャパン(JJP/GK)の機材やネットワークも活用させていただきたい」(赤坂社長)と語り、出資比率を従来の33.3%から9月末までに50.0%へ引き上げて筆頭株主となったジェットスター・ジャパンを活用しつつ、自社路線の強化を検討していく。
全日本空輸(ANA/NH)も、成田発着の国際線は夏ダイヤでは現行36路線から33路線に減少し、羽田発着は現行の24路線から36路線に増える。JALと同じく生産体制の移行に伴うもので、需要動向を見ながら成田路線の再構築を進めていく(関連記事)。
関連リンク
日本航空
JALの羽田新路線
・JAL、羽田発着枠増枠でホノルル2便 20年3月国際線強化、全国からハワイへ(19年11月19日)
特集・65周年迎えたJAL米西海岸路線(全3回)
(1)サンフランシスコは「古くて新しい街」
(2)シアトルは「非日系重視」
(終)なぜJALはシアトルを成田に残したのか
JALの夏ダイヤ新路線
・JAL、成田-ウラジオストク2月就航 ベンガルールは3月、SFO・グアムも強化(19年10月30日)
ANAの羽田新路線
・ANAの羽田国際線、12新路線 成田の米国5路線運休・減便へ 20年夏(19年11月19日)
ZIPAIR
・写真特集・ZIPAIR 787初号機成田到着(19年10月28日)
・なぜZIPAIRの787は白なのか JAL初期導入機活用の思惑(19年4月14日)
・JAL中長距離LCC「ZIPAIR」、機体デザインと制服発表 西田社長「働きやすさ重視」(19年4月11日)
・ZIPAIR、40億円増資 JAL全額出資は変わらず(19年4月11日)
・JAL中長距離LCC「ZIPAIR」、787で成田-バンコク・ソウル20年就航 米西海岸も視野(19年3月8日)