日本航空(JAL/JL、9201)は11月12日、成田空港の制限区域内で航空貨物や手荷物の運送用コンテナをけん引する「トーイングトラクター」を使った自動運転の実証実験を公開した。2020年度以降の実用化を目指し、航空需要が拡大する一方で深刻化する人手不足に対応していく。
今回の実験は、国土交通省が公募する「空港制限区域内の自動走行に係る実証実験」にJALが応募したもの。空港を運営する成田国際空港会社(NAA)とともに10月31日から開始し、2020年3月31日まで実施していく。
場所は成田空港第2ターミナル本館とサテライト周辺の車両通行道路と駐機場。実験車両は、事前に設定した経路を自動走行できる仏TLD製トーイングトラクター「TractEasy」、遠隔運行管理システムはSBドライブの「Dispatcher(ディスパッチャー)」を使用している。
運転席に運転者が座る「自動運転レベル3」の実証実験で、12日は第2ターミナル本館手荷物仕分場とサテライト手荷物仕分場間の約400メートルを、バラストを積んだ貨物コンテナ4つをけん引する形で行われた。トーイングトラクターは、GPSやレーザーによるセンサー「LiDAR(ライダー)」、慣性計測ユニットなどで位置やほかの車両、歩行者との距離などを検知し、最高10キロの速度で走行した。自動運転中は、運転者がハンドルから手を離しても車線を逸脱することなく走行しており、曲がるところで対向車が近づくといったん停止していた。
自動運転のソフトウェアはEasyMile製で、実証実験のサポートをSAS(Smart Airport Systems)が行っている。Dispatcherはさまざまな自動運転システムの車両を一体管理できるシステムで、走行位置や速度の把握だけではなく、エラー発生場所を地図で示したり、バッテリー残量や走行距離などの管理や分析ができるようになっている。
今回は遠隔操作による走行ではなく、トーイングトラクター上で指示を出す形で運用。今後はトンネルなどGPSの電波が届かないところでも問題がないかなど、実験の難易度を高めていく。JALによると、位置情報はGPS以外にも補正信号を取得しており、ミリ単位で補正しているという。
JALのグランドハンドリング企画部の手島康浩部長によると、成田空港で使用しているトーイングトラクターは250台。1台を無人化すると、2-3人程度を別の仕事に割り振ることができそうだという。成田では現時点で人手不足にはなっていないものの、将来的な人口減少による人手不足やインバウンド増加に対応できる体制作りを目指す。
関連リンク
日本航空
成田空港
国土交通省
TLD
SBドライブ
自動運転実験の動画ニュース(YouTube Aviation Wireチャンネル)
・JALが成田空港で自動運転実験 トーイングトラクターで貨物コンテナ運ぶ
自動運転
・ZMP、JALと成田空港で自動走行実験 20年にトーイングトラクターで(19年7月27日)
・成田空港、自動装着の搭乗橋 AI活用、4月から試験導入(19年3月27日)
・ANA、佐賀空港でグラハン新技術を検証 「イノベーションモデル空港」に(19年3月27日)
・ANAと豊田自動織機、佐賀空港でトーイングトラクター自動走行試験(19年3月27日)
・中部空港、連絡バスの自動運転実験 道路改良せず制限区域走行(19年3月20日)
・ANAとソフトバンク、羽田2タミで自動運転バス実験 磁気マーカーでGPS補完(19年1月23日)
・ANAとソフトバンク、羽田で自動運転バス実験 20年以降実用化へ(18年2月25日 )
・官民で航空業界の技術革新 国交省、省力・自動化推進の連絡会(18年1月30日)
電動車いすの自動走行
・JALとWHILL、羽田1タミで電動車いす自動運転の実証実験 20年度実用化へ(19年11月3日)
・ANA、成田乗り継ぎで自動追従車いす実証 国際動線1キロ、“カルガモ型”で移動も(19年10月30日)
・JAL、羽田で次世代電動車いすの自動運転試験 11月に1タミ、20年度実用化目指す(19年10月17日)
・ANA、成田で自動追従車いす 国際線乗継ぎで実証実験(19年5月16日)
特集・JALさん、シリコンバレーで何やってるんですか?
前編 表敬訪問で終わらせない
後編 地に足着いたベタなイノベーションを