日本航空(JAL/JL、9201)と日本空港ビルデング(9706)、WHILL(横浜市)の3社は11月2日、羽田空港で電動車いすの自動運転による試験走行を報道関係者に公開した。3日まで実施し、2020年度中の実用化目指す。
場所は羽田第1ターミナル南ウイングの3-9番搭乗口とコンコース間。JALグループ便の乗客で、車いすを利用していたり、長距離を歩くことに不安を感じている人が対象で、WHILが開発した「自動運転システム」に乗りたい人に体験してもらう。
WHILLの自動運転システムは、1人乗りのパーソナルモビリティ「WHILL Model C(ウィル・モデル・シー)」に自動運転・自動停止機能などを搭載し、デザイン性と走破性に優れた点が特徴の「自動運転モデル」と、複数台を管理・運用するシステムで構成する。
自動運転モデルの左右のアーム部分に搭載したステレオカメラや後方などに設置したセンサー群で、周囲の状況を検知。人や障害物の前で自動停止したり、あらかじめ収集した地図情報とセンサー群で検知した周囲の状況を照らし合わせ、自動走行を行う。空港や駅、商業施設などの大型施設での利用を視野に入れて開発したという。自動走行は、タブレットの画面上のボタンを押すと開始や終了が行えるようになっていた。
JALでは現在、羽田で車いすを使用する人のうち約半分が健常者で、長時間歩くと身体に負担が掛かる高齢者などだという。今回の実証実験では、電動車いすを利用するスタート地点から搭乗口までの往路は、利用者に車いすを自分で操作して移動してもらい、利用後の車いすを搭乗口からスタート地点へ返却する復路に自動運転を用いた。
往路をマニュアル走行にしたのは、食べ物やおみやげを買いたいといった利用者のニーズにも応えるためで、復路は誰も乗せずに回送するだけのため、自動運転にした。
2日の段階では、JALの地上係員やWHILLのスタッフが電動車いすに伴走していたが、将来的には付き添いなしで運用できるようにする。自動運転の実用化により、車いすの回送など係員の付き添いが不要な作業を省力化し、手助けが必要な乗客のケアなどに係員が注力できるようにする。
JALは、すべての乗客が空港内を待ち時間なくシームレスに移動できる「JAL SMART AIRPORT」の実現を目指している。また、自宅から目的地までをシームレスでストレスフリーに移動できる環境を構築し、旅先での滞在体験をより豊かにするよう、移動を利用者にとって一元的なサービスと捉える概念「MaaS(Mobility as a Service)」が利用できる社会環境の実現も目指している。
日本空港ビルは、2016年に官民連携で「Haneda Robotics Lab」を開設。空港でのロボット活用を世界に発信しており、WHILLも実証実験プロジェクトに選ばれた。WHILLはパーソナルモビリティと自動運転システムを提供することで、既存の交通機関を降りてから目的地までの「ラストワンマイル」の移動を改善する取り込みを進めている。
WHILLは羽田のほか、オランダのアムステルダム・スキポール空港や米国のダラス・フォートワース国際空港、アラブ首長国連邦のアブダビ国際空港、カナダのウィニペグ国際空港でも実証実験を順次実施する。
3社は今後、2020年度中の空港での自動運転パーソナルモビリティの商業化や実用化を目指す。
*写真は16枚。
関連リンク
日本航空
Haneda Robotics Lab
羽田空港国内線旅客ターミナル
WHILL
電動車いすの自動走行
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