天草エアライン(AHX/MZ)とオリエンタルエアブリッジ(ORC/OC)、日本エアコミューター(JAC/JC)の九州3社と全日本空輸(ANA/NH)、日本航空(JAL/JL、9201)は10月25日、地域航空サービスアライアンス有限責任事業組合(EAS LLP)を設立した。経営環境が厳しい地域航空会社が存続できるよう、ANAとJALの系列の垣根を越えた取り組みを進める。
5社が出資するEAS LLPの出資金は1000万円で、期間は4年間。3年を経過した時点で取り組みを検証し、その後の対応を協議する。事務所は東京・新橋に置き、JALの畑山博康氏が事務局長、ANAの小田切義憲氏が事務局次長を務める。技術面は格納庫や部品庫、シミュレーターなどJACの設備と体制のある鹿児島空港を中心として、熊本県の天草空港を拠点とする天草エアラインや、長崎空港が拠点のORCと連携していく。
安全や営業強化、調達の効率化、業務共通化や人員協力などをEAS LLPが手掛けるが、機材や路線計画などは各社が従来通り決める。安全面では整備の協業や予備機・部品の共用、シミュレーターの共用や訓練の受委託、運航系マニュアルの統一などを進める。畑山事務局長によると、マニュアル統一は今年度から着手し、2020年度に深掘りしていくという。
営業面では、系列を越えたコードシェアの拡大や旅行商品の共同開発、共同プロモーションなどを展開していく。コードシェアが実現すると、ANAが出資する航空会社とJALがコードシェアするのは初めてになる。現在はJACと天草エアはJALと、ORCはANAとコードシェアを実施している。
すでに一部の分野では各社ごとの連携も始まっている。コードシェアは21年度中に系列をまたいだ形に拡大を目指す。部品の共用も系列内にとどまっていたが、JALとANAをまたぐ形で実施していく。
LLP(有限責任事業組合)は、出資者が出資額までしか事業上の責任を負わない有限責任制で、意思決定は原則として出資者全員の同意の下で行われる。離島やこれに準じる地域の生活に重要な役割を果たす路線を維持できるようにするため、自治体などが出資する地域航空各社の経営の独自性は維持しつつ、安全体制の確立と安定的な運航確保、効率化を目指した協業を目指す。
国土交通省航空局(JCAB)は昨年12月18日に、地域航空会社の今後のあり方を考える「地域航空の担い手のあり方に係る実務者協議会」の検討結果報告書を公表。この中で、大手2社と九州の地域航空会社3社によるLLPの設立を取り組みの第1弾とした。一方で、経営統合の早期実現は困難と結論づけている。
九州3社は、JACにはJALと奄美群島12市町村が、天草エアは熊本県や天草島内2市1町など、ORCは長崎県やANAホールディングス(ANAHD、9202)などが出資。機材はJACがATR42-600(1クラス48席)が7機とATR72-600(同70席)が2機の計9機、天草エアはATR42-600(同48席)が1機、ORCはDHC-8-Q200(同39席)とANAとの共同事業機であるDHC-8-Q400(同74席)が2機の計4機。路線はJACが19路線、天草エアが3路線、ORCが6路線となっている。
関連リンク
天草エアライン
オリエンタルエアブリッジ
日本エアコミューター
全日本空輸
日本航空
・九州の航空会社、LLP設立で共同事業へ 国交省が報告書(18年12月19日)
・ANAとJALなど4社、「しまとびクーポン」今年も継続 奄美と長崎、マイルで離島路線(19年8月26日)
・ANAとJALなど4社、マイルで離島路線「しまとびクーポン」 奄美と長崎対象(18年10月30日)